マルチン郡へ贈る物資や絵画など大量の荷物を前に旅の成功を誓う第2次図書贈呈団の6名

第1次図書贈呈団からしっかりと受け継いだ交流のバトン。
第2次図書贈呈団 団長  大 野 公 一
(副執行委員長)


 旅の初日、朝6:30三宮発のリムジンバスから始まったモンゴルへの移動は1日がかりとなった。乗り継ぎ時間を利用して、お互いの家族のことや今回の旅での役割についてなどを話し合い、少しでもお互いのことを知ろうと心がけたおかげで、メンバー6名がすっかり打ち解けることができた。
 いよいよウランバートルのチンギスハン国際空港に到着した。心配していた聴診器と血圧計が税関のチェックに引っ掛かったが、全員で手分けして荷物を開けたりボディーランゲージも交えた説明で何とか全ての品物を持ち込むことができた。
 ウランバートル市内のホテルにチェックインし、事前に依頼してバトスフさんに購入してもらった絵はがきを、今回、絵を描いてくれた子供たちに送るため、手分けをして40名分の住所とメッセージを書く。メンバーは長い一日に疲れ気味だったが、絵を描いてくれた子供たちの顔を思い浮かべ、笑顔で絵はがきを書いていた。旅の初日に疲れをおして絵葉書を書くメンバーの笑顔を見ていると、「今回の第2次図書贈呈団の旅はきっと成功する」という思いが胸を突き上げてきた。
 マルチン郡は、約700世帯、約3,000人が住んでいる。家畜数は13,600頭で、主な施設は郡庁舎、小中学校、病院、個人商店であり、その周りに民家が建ち並んでいる。小中学校の生徒は、約600名で教師が27名、郡にひとつの学校である。学校のある間は寮に入り、夏休みには家族と共に遊牧するとのことだ。マルチン郡には電気がない。私たちが泊まったゲストゲルは発電機をたいてくれ、学校や個人の家もそうしているらしい。今年中に電気が引かれる予定で人々はそれを待ち望んでいる。電話は今年の2月より携帯が通じるようになり、これまでの生活より格段に便利になったようだが、今は郡の幹部しか持っていない。
 このような何もない僻地の村を、2004年に引き続き私たちは訪れた。訪問する先々で歓迎を受けたことにより、第1次図書贈呈団の先駆者としての第一歩の影響の大きさに驚き、そして第2次贈呈団のメンバー全てが感謝した。彼らが歩いた後が道となり、私たちはその後に続くことができたからである。そして今回は新しい試みとして、日本の子供たちが描いた絵を持参しマルチン郡で絵画展を開催した。この企画が大きな成功を収めたことにより、次はマルチン郡の子供たちが描いた絵を送ってもらい、日本で絵画展の開催が実現されるだろうと思っている。
 私たちができることは僅かであるが、こうした交流を末永く継続していくことで、近い将来にマルチン郡の子供たちが留学生となって日本を訪れ、私たちを訪問してくれるようなことが実現できれば良いと心より願っている。
 今回の旅を通じて、多くの方々と交流し、同じものを食べ、酒を飲み、肩を組んで歌を歌ってきた。メンバーの間でも、時には大きな声を張り上げ、時には笑い、時には涙を流し、真剣に心と心でぶつかってきた。このような体験は望んでもなかなかできるものではない。今回の6名のメンバーが一緒に旅をする機会を与えてくれ、快く送り出してくれた職場のみなさんに心より感謝したい。


今回の旅を終えて心に残った思い出

岡田 圭司

大自然に感動しました。また、スポーツ交流では、日本にはない仲間意識をすごく感じました。日本では、このような催しでは消極的な人が多いが、モンゴルの人たちは積極的であると感じました。疲れましたが良い思い出になりました。

黒岡 達男

子供の笑顔がすごく印象的でした。日本は知らない人が来ると、見て見ぬふりをするけれど、モンゴルの人たちは、皆笑顔で寄ってきて、なんだか動物園の動物のような感じでした。みんなの笑顔が、この旅での最高のプレゼントでした。

永野 竜規

日本では、周囲に何らかの建物が建っているけれど、この大草原は360度何も見えないぐらい広大で、とても印象的でした。近くに羊の群れがいると思って近づいてみるものの意外に遠く、遠近感を失ってしまうぐらいでした。また、言葉が通じないものの身振り手振りでも十分に気持ちは伝わるものだと感じました。

角尾 隆

みんなの笑顔がすごく印象的でした。今の日本人は笑顔を忘れつつあるので、改めて笑顔は大切で素晴らしいものだと思いました。

坂本 憲太郎

羊の肉と、ウォッカに尽きます。訪ねる場所毎で、これらをご馳走になり、文化の違いが印象的でした。また、羊のくるぶしの骨でつくった、サイコロのようなもの(シャガイ)で、すごろくのゲームをしたのも良い思い出でした。

大野 公一

最後にマルチン郡から旅立つ時に、マルチン郡の境までたくさんの人たちが見送りに来てくれて、モンゴルの歌と日本の歌を全員で大合唱したのが印象的でした。子供の頃は合唱をしましたが、大人になってみんなで歌うことなんてなかっただけに、心温まる見送りにすごく感動しました。



写真1
 

写真2

写真3

ひと・人・ひと、図書贈呈式の当日、会場となったマルチン郡のホールは300人ほどの人たちであふれかえった。モンゴルの「子供の日」でもあり、子供たちの歓声で大変な賑わいだ。(写真1) この大観衆を前にして、大野団長が覚えたてのモンゴル語で「サインバイノー!(こんにちは)」と挨拶(写真2)をはじめると、ざわついていた会場が一瞬静かになり、はるか遠い国から来た外国人たちがモンゴル語で一体なにを話すのか注目した。会場の舞台の上には、今回、贈呈団が日本から運んできた図鑑などの本や折り紙、バレーボールやバスケットボールなどが目録と共に並べられた。(写真3)
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写真4

写真5
 

写真6

今回贈呈した物の中には、制服を持っていない3名の子供たちへの制服も含まれていた。第3次贈呈団が来るころ、この制服を手にした子供たちが、どの様に成長しているのか楽しみだ。(写真4) 贈呈団メンバーが子供たちとの交流を図るために開いた折り紙教室では、プレゼントした色とりどりの色紙で動物や風船、折鶴などを折った。子供たちの笑顔は万国共通で、作品の前で笑う少女たちに、見ているこちらが心癒される想いがする。(写真5) 日本の子供たちが描いてくれた絵画40点と、年1回行われるファミリーイベント「潮干狩り」の様子を写真パネルにした20点を、郡のホールの一角を使って展示した。モンゴルでは珍しい海の風景に、くい入る様にして見る少年の姿も。(写真6)
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写真7
   

写真8

写真9
   

写真10
   
モンゴルには海がない。空港からマルチン郡まで車で約4時間。その途中、世界遺産に指定されたオブス湖という大きな湖がある。肉眼では対岸がよく見えないほど広い。波が立っていて、まるで海だ。(写真7) 昨日まで赤茶色っぽい岩山だった山々が真っ白に雪化粧。一晩で激変するモンゴルの自然に畏敬の念すら感じる。(写真8と写真13) モンゴルでは人より家畜の数の方が多い。最近ではカシミヤの需要が増え、ヒツジより毛が高く売れるヤギを飼う家が増えた。(写真9) 朝、ゲルの真ん中にある煙突から煙がのぼると、朝ごはんの支度が始まる。(写真10) ゲルの向こうの地平線に太陽が沈むのは午後9時。夏の長い一日が終わる。エルデネットの小高い山からエネレル子供センターの夏のキャンプ地を見下ろすと、緑豊な草原の中に子供たちが耕した農園が見える。(写真12)
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