私が20代の頃に、エンジニアになろうと意識してやってきたことを紹介したいと思います。
まずは、目標とする先輩を見つけることです。私が入社当時、O先輩とH先輩というすごい先輩がいました。二人の先輩はお互い、『撹拌』という技術について、プロフェッショナルでありながら、一人は学者肌、もう一人はサラリーマン肌と、両極端な性格でした。二人の下で働きながら、どちらの言うことが正しいのかと悩みながら過ごしていた時期があります。あの先輩を追い越そうという、目標になる先輩を見付け、直ぐには難しいですが、徐々に追い越そうと努力することが大事だと思っています。
努力という点では、当社の製品の核となる技術とその他の周辺技術を学ぶ必要があります。普通は製品の核となる技術を勉強しなければならないと思いがちですが、核となる技術は経験を重ねればそれなりに技術を身に付けることができます。しかし、周辺技術は自ら努力をしなければ身に付けることはできません。当社の製品でいうと、圧力容器や撹拌装置が核となる技術にあたり、ガスケットやメカニカルシールなどが周辺技術として分類されます。液体を混ぜるという点においては、撹拌翼や伝動装置が非常に重要になってきますが、ガスケットやメカニカルシールがなければ反応機として成り立ちません。周辺技術についてはメーカーからの購入品も多いのが事実ですので、自分から勉強しなければ技術を習得することはできません。しかし、他の人が知らない周辺技術を身につけることで、自部署の中で認められる存在になることができます。
また、自社の製品の歴史を知る努力をすることも大事です。先輩を追い越すためには先輩の持つ知識を何らかの形で学ぶ必要があります。先輩に聞くことも一つの方法ですが、私は、実績の図面を数多く見るということを意識していました。技術部には今まで納入した実績図面がまとめてファイリングされています。過去の実績を探す際、ただ単にファイルをめくって目的の図面を捜すだけではなく、目的の図面に辿り着くまでの図面を一生懸命に見て勉強していました。目的とする図面だけが勉強となるのではなく、その前後にある図面も同じよう吸収できる技術があります。目的の図面だけを捜すことはすぐにできますが、他の図面を見て、製品の歴史を知ることが先輩を追い越す一歩になると考えていました。定時内はオーダー業務、定時後は周辺技術や実績図の勉強というように時間を使っていました。そのため、周りからは「遅くまで仕事をしている割にはアウトプットが少ないどんくさいやつ」と思われていたと思います。
私は設計だったので描いた図面に対して、最後にサインをしていました。図面にサインをするということはその図面に対して、全てに責任を持つということになりますが、それはなかなか難しいことです。特に今までの図面を少し修正して流す、流用図です。流用図が流れ、現場から間違いを指摘されることがありますが、「前は流れていたのに何故?」と思うことがしばしばありました。しかし、図面は明らかに間違えているのです。自分が設計した部分ではなく、前の担当者の間違いであっても、自分がサインをした図面に対しては全ての責任を持つという意識が大切だと思って努力をしていました。
当社の製品であるグラスライング製の反応機にはメカニカルシールが付いていますが、メカニカルシールはその機器の心臓部に当たります。これはメカニカルシールがしっかりと機能しないことにはお客様のところではまったく使い物にならないからです。しかし、このメカニカルシールはメーカーからの購入品であり、先程も話した通りの周辺技術です。私は志願したわけではありませんでしたが、若い頃にメカニカルシールを担当することになり、当時は必死で勉強した記憶があります。今思えば非常にラッキーであったと思います。
メカニカルシールの担当となったことで、自分の担当以外のオーダーでも、メカニカルシールに関係するクレームは全て私の担当となりました。今でこそメカニカルシールに関するクレームは少なくなっていますが、当時は本当にメカニカルシールに関するクレームが多かったため、私はメカニカルシール担当と言いつつ、実際はクレーム担当でした。クレーム対応でお客様のところを訪問することも多く、最初は嫌々でしたが、徐々に開き直るようになり、「終わらないクレームはない」、「殺されはしない」と思ってクレーム対応するようになりました。
プロフィールを紹介する今中所長 |
クレームもそうですが、業務をこなしていく中で、外に出向くということを非常に意識するようになりました。お客様を訪問する他、学会などにも参加しましたが、知識が無ければそこで恥をかきます。そうすることで会社に帰って勉強せざるを得ない状況を作るわけです。恰好をつけるわけではありませんが、自らそういった意識を持つように心掛けました。ただ、今でこそ、最低限の知識があれば、若いうちからどんどん外に出て経験をさせるようになってきていますが、当時は会社として、一人前でもない担当者を外には出せないという風潮があったことも事実です。
また、他部署の仕事にどんどん首を突っ込んで自ら数回やってみることも大事です。若い頃は多少の越権行為も許されます。営業が注文を取り、QAが合格を出して製品を出荷するまで、私達はそこまで難しい流れの中で仕事をしているわけではないので、自らその仕事を経験することで、全体感が見えるようになります。そうすれば、営業が注文を取ったことがわかればいつ自分の仕事をしなければならないか、いつ書類が流れてくるかなどの全体の流れを読めるようになります。これは、仕事をしていく上で仕事を積極的に前倒しでやっていけることに繋がる、非常に大事なことだと思います。
私が20代の頃に意識してやってきたことを恰好良くまとめると、こういったことを積極的に前向きにやってきたように思います。事務所と現場、担当業務の違いもあり、直接参考にはできない部分もあるかと思いますが、それぞれ自分なりに噛み砕いて、積極性を出していただければと思います。 |