「誰がやる持続可能な食糧安保?」
―地元で健康的に栽培する農業とは―
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環境省 環境カウンセラー 
岡 田 清 隆


危機的状況ともいえる
日本の食料とエネルギー自給率!

 みなさんこんにちは。私は環境省の環境カウンセラーとして活動をしている岡田と申します。エコユニオンの若い方々とは、昨年にみなさんの先輩である第4期ビジョンづくり委員会のセミナーに参加して以来の付き合いがありますが、今回は第5期ビジョンづくり委員会のスタートということで、キックオフにあたり新メンバーのみなさんとディスカッションする機会に声を掛けてもらいました。せっかくの機会ですので、ぜひ、みなさん一人ひとりが次のキーパーソンになっていけるように、話をじっくりさせてもらいたいと思います。
 さっそくですが、日本の食糧自給率は何パーセントになっているか知っていますか? ここで言う食糧とは糧(かて)のことで、米や小麦などの主要穀物を指しますが、消費カロリーベースで換算した日本の食糧自給率は28%です。一方、米や小麦などの主要穀物に野菜や魚、肉類などを加えた料(りょう)である食料自給率は38%となっています。この数字からもわかるように、日本は食糧および食料ともにその自給率はとても低く、ここまで落ち込んでいるのです。日本は先進国の中でも非常に食糧(食料)自給率が低い国であるということを、みなさんしっかりと頭に入れておいてください。
 そしてもう一つ大切なものがエネルギーです。みなさん、日本のエネルギー自給率は一体何パーセントになっていると思いますか? 2001年のデータによれば、原子力エネルギーを入れて20%を切りました。このようなエネルギー自給率でみなさんは生活をしています。では原子力エネルギーを除いたら何パーセントになるでしょう? 恐ろしいことに4%なのです。
 それでは主要国のエネルギー自給率はどうなっているかというと、同じく2001年のデータでは米国は原子力を含めて75%であり、原子力を除いて73%です。フランスは原子力の割合が高いですが原子力を含んで50%、原子力を除いて15%、ドイツは原子力を含んで38%、原子力を除いて29%、英国はほとんどが原子力を含まないエネルギーで113%、中国はほとんどが石炭エネルギーで100%程度となっています。このように日本のエネルギー自給率は他国と比べて低くなっており、これが日本の現実です。2005年も日本のエネルギー自給率が低い傾向は変わりません。


 このように、命を支え経済を支えて、根本的な生活を支えていくためのものとしてのエネルギーというものに対し、みなさんには常に関心を持ってもらいたいのです。現在の日本は非常に危険な状況なので、無駄な電気を消すのは当たり前になります。また、日本はたくさんハイテクを持っているので、もっともっとエネルギー効率の良い製品やサービスを作ることができると思います。
 今日は、みなさんに食料とエネルギーの根本的な課題について提示すると共に、有効な対応策として実際に取り組んでいる実例を紹介していきますので、私の話を聞いて、みなさんそれぞれが何かを感じ、自分で考え、みなさん同士でディスカッションをして欲しいと思います。


一人あたり石油2,000リットル相当
を食べています

 食べ物が私たちの口に入るまでにどれだけのエネルギーが消費されているのか、考えてみたことはありますか?
 先進国に供給されている食べ物は、食卓に行きつくまでに平均して約2,000km(約1,300マイル)を旅しているということがデータとして出てきています。飛行機で運んだり、船で運んだりするというエネルギーを消費して、やっと私たちの食卓へ運ばれてきているわけです。たとえば、鯖はノルウェーから、タコはアフリカ、ポルトガルなどから来ています。淡路島でもタコがとれますが、みなさんもこれから食材を買う時には、その食材がどこから来ているのかを関心をもって見てほしいと思います。
 では、普通の食パン1斤をつくり、包装して消費者の手に届くまでに、その食パンに含まれるエネルギーの何倍のエネルギーが消費されているか、みなさん見当がつきますか? 恐らくそのようなことを考えて食パンを食べたことがないので見当がつかないと思います。普通の食パン1斤で、実に2.5倍のエネルギーが消費されているのです。このことを考えれば、少しだけ食べてゴミ箱にすてるということはしないですよね。
 また、生態学者のデイビット・パアイメンテルというコーネル大学の先生は、「現在の社会では、1kcalの食べ物をつくるために10kcal(約42キロジュール)の炭化水素を使っている」と言われています。
 また、生物学者のジャナイン・ペニュウスは「私たちは毎年、石油換算で、一人当たり13バレル(約2,000L)相当の食糧を食べていることになる」と言われています。
 イチゴを例にとってみますと、イチゴは本来、春に栽培されるものなのですが、最近ではクリスマスケーキに使用されるなど、寒い時期にも栽培する必要があるため、ものすごく多くのエネルギーを使ってビニールハウスで栽培しなければならないわけです。
 このように、食料が口に入るまでにどれだけのエネルギーが消費されているのかを考えながら生活をしていただくと、食べ物を粗末にしなくなりますし、エネルギーのムダ使いをやめるようになると思います。


驚異の殺虫剤

 農業を脅かしている原因の一つとして、殺虫剤の大量使用が挙げられます。
 害虫から農作物を守るために農業では盛んに化学物質である農薬や殺虫剤を使用しています。1962年にアメリカの女性生物学者であるレイチェル・カーソンは、化学物質による環境汚染の警告の書として「沈黙の春」を発刊しました。「沈黙の春」は、DDTを始めとする農薬や殺虫剤などの化学物質の危険性を公にし、社会的に大きな影響を与えた書として知られています。その昆虫を駆除する目的で開発された殺虫剤の使用量を見ると、1964年で約18万トン、1996年で約32万トン、2000年で50万トンとなっており、年々増加しています。一方、害虫被害を受けた農作物の割合は、1950年代で31%、2002年で37%となっており、農薬の使用量が年々増加しているにも関わらず、ほとんど変化がありません。殺虫剤を散布し目的の害虫を駆除しても、その殺虫剤に対して免疫性のある新たな害虫が発生し、農作物に被害を与えます。そして、新たに発生した害虫を駆除するために新たな殺虫剤を散布します。このようにして殺虫剤の使用量は年々と増加していきますが、新たな害虫の発生によって農作物の被害を激減させることが難しくなっています。この殺虫剤は人体に悪影響を及ぼし、農業従事者の殺虫剤による急性中毒患者は、年間で2,500万件発生しており、コーネル大学の研究では、米国農村部の1,500の郡で化学物質の使用とガン死亡者に深い相関関係があると発表しています。


モノカルチャーによる弊害

 次に農業を脅かしているもう一つの原因として、食物を育てるために使える土地が減少し続けていることが挙げられます。米国では、スプロール型開発によって、約40万エーカー(約18億2,000万m)もの良質の農地が消失しています。そして、全人口のわずか1%の人がすべての国民を養う食糧を生産し、全農場の18%の農場で全食糧の87%を生産しています。現在、欧米を中心にアグリビジネスによる農業の独占が起こっており、その農業手法は、広大な土地に1種類の作物を育てるモノカルチャー(単一栽培)が大部分を占めています。限りなく広い大地に大量に同じ種類の種を植えて、いっせいに刈っていくという栽培方法がモノカルチャーです。しかし、モノカルチャーでは、バッタやイナゴ、細菌などの害虫が発生した場合、農作物が全滅する危険性があります。したがって、リスクを避けるためには、モノカルチャーではなく、多種多様な種を植えて栽培するキメラカルチャーが必要になります。多種多様な農作物を植えてリスクを回避していくことが非常に大切になります。



ビジョンを持ってください!

 「10のうち1が実際に農作業をする人間で、残りの9が石油に関する仕事をする人間であるとき、絶対的な力をもつのはどちらだと思いますか?」(会場から農作業です!)。この農作業で食料を作っているひとが最後に力をもっているのではないでしょうか。みなさんもこのことを忘れないでください。また、みなさんが取り組まれている仕事において「神鋼環境ソリューションという企業は何のための企業なのか?」「自分達に対して、どのような社会的ニーズがあるのか?」ということを常に考えてほしいと思います。
  ビジョンを作ってください。ビジョンと言うのは先見性です。みなさん10年先のスパンで考えてください。人間のバイオリズムも10年で動きます。10年を1つのタームにして考えていけば、かなり良い仕事でき、良い発見ができると思います。あとでお話ししますが菜の花プロジェクトも10年前に提案したものです。


良いニュース

 現在、世界中で有機農業と有機食品ビジネスが急成長しています。米国では、有機農業に携わる人口が年間約12%ずつ増加しており、日本にもその影響は波及されつつあります。
 そして、有機農業に携わる人口の増加にともない有機食品の売り上げは、1996年から2001年の5年間で250%という驚異的な数字で増加しています。この販売拡大のニュースは、有機食品商業協会(OTA)によって、全米各地に向けて発信されています。米国の有機食品小売業の売り上げは1990年は10億USドル、2005年では200億USドルを超えています。


農業に大きな影響を与える自治体

 自治体は農業にどのような影響を与えるか?
 地方自治体は土地の利用に深く関わっており、地方自治体と中央政府は農業用地を定め、その農業用地や周辺の土地の開発を制限したり、開発の基準を策定したりする権限を持っています。
 また、地方自治体はコミュニティの経済開発の方策や計画を通じて経済活動として農業に影響を与え、化学物質を使用しない有機農業を促進するためにインセンティブを与えることが可能であり、提言して実行させることが出来ます。
 つまり、土地利用や公衆衛生に関する条例によって、殺虫剤や化学肥料の使用を規制することが可能なのです。
 一つの例を紹介すると、兵庫県の豊岡市はコウノトリをシンボルバードとするために、地域に殺虫剤、化学肥料の使用を禁止する条例を制定しました。そのことによって、田んぼにドジョウが戻ってきました。そして、農家の方が冬の田んぼに水をはっておく協力をしてくれたことで、ドジョウの稚魚がふ化するフィールドを維持しています。


都市と有機農園の新しい関係
―ローゼンダール農園―

 スウェーデンの中心部には、ローゼンダール農園という有機農園があります。みなさんのまわりで例えると、神戸の中心部に有機農園が作られるようなものです。
 ローゼンダール農園は、スウェーデンのストックホルムという都市の中心部にあるため、70万人の人々がバスですぐに行ける農園です。訪問者が野菜畑やハーブ畑、花畑の間を散策しながら野菜や花を採って、最後に園内の園芸店で安い値段で購入することができます。
 そして、園芸店では、ガーデニング用品や陶器、また、さまざまな有機栽培による農作物が売られております。店員さんに聞けば、ガーデニングの方法も指導してくれます。売られている農作物は、日本のスーパーでは捨てられるような、虫が食べた農作物や、形のいびつな農作物も店頭に並んで売られています。これは、「この農作物は虫も食べたものだから安全なんです!」という意味であり、安全なものが何かということを、みなが知っているから安全なものを買う。そういうことを毎日の生活の中で身につける場所にこのローゼンダール農園が生かされているのです。
 曲がりくねった遊歩道沿いにハーブ園やバラ園、ニワトリ小屋やウサギ小屋があり、子供たちはこれらの動物たちを見て楽しむことができます。(ローゼンダールとは、バラの丘という意味)この場所はもともとリンゴ園であり、ここで栽培されたリンゴをリンゴサイダーとして加工して、農園内で販売したのが始まりでした。
 温室風のレストランでは、農園で収穫した食材のランチや、カフェを楽しむことができます。そして、注文したランチは、リンゴ園内のピクニック用テーブルまで、自分で持っていって食べることができます。食べ残しが出たものは遊歩道近くに配置されたコンポスト容器に入れ、陶器製のお皿やコップは備え付けの容器返却カウンターに戻す、ということを当たり前のようにやっています。紙のトレイなどは一切使用していません。また、敷地内の養蜂園で収穫したはちみつや、フィンランド式薪オーブンで焼いた香り高いパンも販売しています。


農園のイラストマップ

一番最初に植えたリンゴの木


ローゼンダール農園の歴史

 ローゼンダール農園は18世紀から始まっており、もともとはスウェーデン王室の庭園でした。19世紀の後半にガーデニングを教える教育センターとなり、スウェーデン園芸協会が事務所・実習所として管理してきました。そして、現在では「ローゼンダール農園の友」という民間の財団が管理し、園芸と農業の教育センターとして伝統を受け継いでみなに愛される場所となっており、特にエコパークという形でどんどんと生かされています。
 ローゼンダール農園と有機農業の始まりは、1960年代の初頭にバイオダイナミック農法の経験をもつ2人の園芸家が、ローゼンダール農園の修復を手伝ったことから始まったと言われています。このバイオダイナミック農法というのは、有機農業をシステマティックに取り組む農法のことです。そして、農園の修復の噂が口コミで広まると、多くの人が自主的に農園の作業をしたり、レストランで食事をしたりするようになり、園芸店で買い物をする人たちも出てきました。そして、レストランの創始者が有機食材の料理本を出版したことから、この農園について多くの人に知られる存在になりました。
 農園の敷地は、造園技師や設計士の一団が管理しており、設計するためのブレインストーミング(自主討議)に参加することが1つのルールとなっています。
 また、バラ園やベンチがあり座ることのできる公園、花と有機野菜を一緒に育てる農園などのアイデアが誕生し、どんどんと進化していきました。
 バイオダイナミック農法で欠かせないことは、@堆肥作りと土づくり。A農園内で養分が循環し、物質の流れが完結している。Bレストラン等の食べ残しや食材の残渣、木の葉、ニワトリやウサギの糞尿は、すべて堆肥化され、豊かな土になる。C多くのストックホルム住民が、ここで化学物質を一切使わない有機堆肥化を学ぶ場所として定着している。などが挙げられます。
 みなさんの会社がある地域などでも、このような農園を作れる可能性のあるところを探せば、いくらでも見つかると思います。まずは、このような農園の魅力を感じてくれる人を少しずつ増やしていくことが大切です。国が政策を出すまで待っていては絶対にできません。あとでお話しする菜の花エコプロジェクトもそうでした。国が政策を作らなくてはならないように地域が動き、それが成功の秘訣となりました。
 ローゼンダールのビジネス的側面としては、融資や補助金を受けない非営利のビジネスであり、敷地内のレストラン、園芸店、パン屋、養蜂その他農園関係の事業の収益により、全従業員の人件費と運営費が賄われています。すべてローゼンダール農園内で還元できるようにしています。



ヨーロッパに展開する
ローゼンダール農園の考え方

 ローゼンダール農園が行っている事業に触発され、スウェーデンの他の地域にも都市農業プロジェクトがどんどんと広がっています。その1つがマスクリンゲンの農業組合です。
 この農業組合はルーレオ郊外というところにあり、25エーカー(約10万m)の農場を持っています。
 都市部に住む人々への食料の供給と、農場訪問の一般人や学生に、エネルギー効率のよい方法かつ、無化学物質による野菜や肉をつくる技術指導を行い、資格を与える拠点となっています。そして、30世帯が非営利の組合「マスクリンゲン自然循環型農業組合」を所有し、運営しています。その組合員は、別の場所でフルタイムの仕事を持っており、週末になると農場で協働作業を行っている人たちです。ここでは、有機の野菜・根菜・香辛料・花・ベリーなどを直販しており、雑草防止のため、休耕地は50頭のヒツジで維持管理をしています。


バイオマス燃料の危険性

 続いてバイオマスについてお話をさせてもらいます。FAOというのは「国連食糧農業機関」のことで、バイオマスエネルギーに関する可能性とバイオマスエネルギー産業の急速な拡大の食糧安全保障や環境への影響の評価について権威がある組織であります。データもたくさん掲載されていますのでぜひFAOをチェックしてみてください。
 サトウキビ、パームヤシ、トウモロコシなどを原料にするバイオマス燃料は、@石炭などの化石代替エネルギー、A温室効果ガス排出削減、B農村地域における新たな職とインフラストラクチャー(経済基盤)創出を約束する、というような特徴からその利用が推し進められています。ところが最近では、大規模モノカルチャーによる土地開拓で、環境損傷と生物多様性の喪失の危険性が大きくなっています。このような農業破壊が現実に起こってきています。車の燃料生産のために食糧作物を人と家畜から奪うということは許されることではないですよね?


どうやって管理するバイオマス資源?

 米国のトウモロコシはエタノールを生産するための原料となっています。ブラジル・インドネシア・マレーシアの大規模モノカルチャー・プランテーションでは、主にサトウキビやパームヤシが栽培され、大規模なバイオ燃料の生産をおこなっています。
 バイオ燃料生産で最も重要になるのは、大規模生産ではなく、小規模農民が自身と地方コミュニティのエネルギー源として、バイオ燃料用作物やバイオマスを作るか、国または国際市場のための、商業生産に寄与する場合のみ、環境の利益となり、食糧安全保障を増強することが可能となります。
 バイオ燃料用作物やその他のバイオマス燃料原料は、食糧作物やその他の植物が並んで育つモザイク状の景観で生産されるのが最善です。これが生物の最も自然な状態であり、モザイク内のバイオマス燃料区域では、風除け、土壌劣化の抑制、自然生物多様性維持等の、生態系サービスに影響を与えます。そして、バイオマス燃料をうまく管理できれば、バイオ燃料生産で利益を期待できますが、一部途上国の農業ルネッサンスに貢献できると思います。
 バイオエネルギー市場の食糧安全保障への影響は、関係国が食糧やエネルギーの純輸出国か純輸入国かにより、マイナスにもプラスにもなるということです。
 そして、食料生産のための土地や水と競合するバイオマスエネルギー作物は、食糧安全保障を脅かすということはハッキリしています。
 バイオマス燃料生産が急速に拡大する米国・ブラジル・インドネシア・マレーシア・中国などは、土地の砂漠化などが起こり、危険区域になる恐れがあります。
 そして、地域エネルギー自給を目指す農村地域には有効な施策が一番大事になるということです。

世界のバイオエタノールの生産量の推移


持続可能な循環型社会づくりモデル
―遂に完成!菜の花エコプロジェクト―

 さて、持続可能な循環型社会モデルづくりということで最初に考えたのが菜の花エコプロジェクト推進会議でした。しっかりとした枠組みをつくるため、菜の花エコプロジェクト推進会議は官・民・産が携わり、オール淡路で取り組みました。自分たちで菜の花、大豆、ヒマワリなどを栽培し、畑を元気にする。そして自分たちが収穫した菜種を絞って、安全ななたね油、天ぷら油などを製造し、実際に台所やホテルで使ってみる。搾油で出た油かすは飼料化して家畜のえさにする。このようなプロジェクトが走り出しています。そして使った後の油(廃食用油)から軽油の代替燃料であるBDFを精製し、トラクターやマイクロバス、菜の花バスに使っています。そして子供たちには、バスへ乗る前に自宅で使った油をペットボトルに入れて持ってきてもらい、精製したBDFを子供たちの目の前で燃料タンクに入れて、「きみたちが持ってきてくれた油でこのバスは動いているんだよ」と知ってもらいます。これがまさに体感できる環境教育なんです。

※BDFとは?
BDF(B=バイオ、D=ディーゼル、F=フューエル)とは、菜種油など廃食用油から精製して得られる燃料のことです。燃焼後の排ガス中に含まれるSOx、黒鉛等が少なく環境に優しい燃料です。

 平成19年度末の集計で54ヘクタールの菜種が島の中で栽培されています。平成20年度の菜種は60ヘクタールを超えることが予想され、まだまだ広がります。
 そして菜種の搾油施設がこの本年度に建設を完了したことで、循環型システムである菜の花エコプロジェクトが遂に完成したことになります。すでに搾油施設の稼働も始めており、なたね油の販売を平成20年3月から始めたところ評判も良く、ほとんど完売状態となっています。このなたね油は安全で美味しいです。
 これを学校給食で子供たちに食べてもらったり、レストランでの使用を展開しています。
 そして、廃食用油は地域ごとに集めることになっています。現在、淡路島ではゴミの回収を18分別で行っており、プラス・ワンに廃食用油を入れています。資源化することによってゴミの減量化を達成し、循環型社会の形成を目指しています。


あわじ菜の花エコプロジェクトの流れ


官・民・産の連携プレーで魅力ある
持続可能な仕組みづくりを!!

 フード資産で地域密着型のプロジェクトを作ることが大切なことです。そのためには、「地域のいろいろなフード資産のメリットを見つけること」「官・民・産の連携プレー」「行政合併や行政改革をプラスに取り組む戦略」「市民に見えるような魅力のある持続可能な仕組みづくり」「具体的なテイクアクション」このようなことを積極的に進めていく必要があります。この講演で私が大きく訴えたかったポイントです。
 農業というと、あまりみなさんになじみがない切り口での話でしたが、生活をするうえで誰もが無関係ではなく、いろんなアプローチで関わりをもつことができるということを、少しでも理解してもらえたと思います。
 ぜひみなさんも今回学んだことを生かして、まずは行動し、積極的に具体的な活動を立ちあげてください。

以 上
(文責:角尾 隆)

講師プロフィール

略  歴
兵庫県篠山市出身
 
1968年 兵庫農科大学(現神戸大学)植物防疫学科
生理生化学遺伝学卒業
1968年〜2007年 学校法人柳学園中学・高等学校
理科教諭(生物・化学・環境)
1997年 環境省 環境カウンセラー登録
(財)ひょうご環境創造協会環境アドバイザー
兵庫県地球温暖化防止活動広域推進員淡路地域代表
NPO法人 菜の花プロジェクトネットワーク理事
あわじ菜の花エコプロジェクト推進会議会長
あわじ菜の花エコプロジェクト普及啓発実行委員会委員長
リサイクルせっけん協会全国幹事
リサイクルせっけん協会関西地域事務局長
リサイクリング・ネットワークin淡路島(RNA)代表
主な著書
「新・兵庫の自然」(のじぎく文庫)
「兵庫のふるさと散歩」(神戸新聞総合出版センター)
「兵庫大百科事典」(神戸新聞総合出版センター)
ひょうご環境学習プログラム(兵庫県)
国際理解教育ハンドブックNo.3,No.4
(あわじ島国際理解教育センター)
趣  味 読書・写真・海外旅行
特  技 こだわり手打ちうどん