セカンドライフのマネープラン img1_1.jpg
 


は じ め に

 中野FP事務所の中野です。本日は、皆さまがセカンドライフについてお考えになる際に必要となる資金計画、マネープランについてお話させていただきます。


セカンドライフ〜公的年金について

■意外とかかる退職後の生活費
 総務省が公表しているデータによると、現在の高齢者世帯の家計においては、世帯主60歳以上の日常生活において実際にかかる生活費は「25.3万円/月」となっています。内訳は「食料費」が62,752円、「教養娯楽費」が27,773円、「通信交通費」が24,964円、以下、光熱水道費や住居費等となっています。(平成16年家計調査年報)
 また、生命保険文化センターが行っている別の意識調査によると、夫婦二人での「老後の最低日常生活費」の平均は24.2万円/月、「ゆとりある老後生活費」には37.9万円/月が必要との結果もあります。
 またこれらの支出とは別に、セカンドライフにおける支出には、税金や社会保険料、医療費の支払い等があり、また住宅のリフォーム費用や車の車検代、子供への資金援助、冠婚葬祭など、日常生活費以外の臨時の支出もあることを合わせて考えておかなければなりません。
 例えば、夫が60歳(80歳まで生存すると仮定)、妻55歳(85歳まで生存すると仮定)の夫婦二人の世帯で、毎月30万円必要であるとすると、年間の必要生活費は360万円(30万円×12ヵ月)となります。
 夫婦二人で過ごす20年間(夫の年齢80歳−60歳)の生活費の合計は7,200万円(360万円×20年)・・・@、夫死亡(80歳、この時の妻の年齢75歳)後、妻が一人で暮らす10年間(85歳−75歳)の生活費の合計は2,520万円(360万円×0.7※×10年)・・・Aとなります。※「夫死亡後の妻の生活費」=「夫婦の生活費の70%」と仮定しています。
 @とA、さらに臨時の生活費を1,000万円と見積もった場合、これらの合計金額はなんと1億720万円となります。
 もちろん、夫婦のどちらが年上で年齢差は何歳あるのか、あるいはセカンドライフをどのように過ごすのかなどは様々なケースが考えられますし、どのような前提で試算するかによって将来必要な生活資金の額も変動しますので、以上を参考に実際に計算をしておくことをお勧めいたします。

【世帯主60歳以上の日常生活費】(無職世帯・月額平均)

■自分の年金を確認しましょう
 セカンドライフの生活設計のなかで、これまで支出の面を見てきたわけですが、ここからは収入の面をお話いたします。
 収入の大きな柱としては、やはり多くの方が「年金収入」を期待することになると思います。
 会社員である皆さんは、公的年金制度(国の年金制度)において「厚生年金」と「国民年金」からそれぞれ「老齢年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金)」を受給することになります。
 夫婦世帯であれば、自分の公的年金だけではなく、配偶者の公的年金についても同時に確認しておく必要があります。


■公的年金はいくらもらえる?
 国が公表しているモデルケースでご説明すると、夫婦世帯の年金受取額は23.3万円/月となるそうです。(夫:60歳まで会社員、妻:専業主婦の世帯。内訳は、老齢基礎年金が夫、妻それぞれ6.6万円/月、老齢厚生年金が夫:10.1万円/月)
 国民年金から受給できる「老齢基礎年金」は加入期間(月数)のみで受取額が変わり、例えば40年間(=480ヵ月)の加入期間のある方ならば、満額の年金受給が可能となりますが、加入期間が40年未満である方は、加入期間に応じて減額された年金を受給することとなります。
 一方、厚生年金から受給できる「老齢厚生年金」は加入期間に加えて、加入期間中の収入に応じた年金額となりますので、老齢基礎年金に比べて計算が複雑になります。



■いくら不足する?
 公的年金からの収入をモデルケースどおりとすると、年間の公的年金収入は約280万円(23.3万円×12ヵ月)となります。
 単純に計算するならば、収入が280万円、支出が360万円、差額の80万円が毎年の不足額となりそうですが、実はこの考え方だけでは不十分なのです。
 ここで注意しなければならないのは、まず第一に、現在の国の年金支給開始年齢は原則65歳からであるということです。
 つまり、仮に60歳で退職しても現在の年金制度では65歳まで年金が全くない、あるいはあっても一部のみであるということに留意する必要があります。
 そして第二に、モデルケースの合計金額(23.3万円)は、夫婦二人とも年金受給できる年齢に達した以降の金額であるということです。
 実際には多くの場合、最初は夫(あるいは妻)の年金が始まり、その後数年たってやっと妻(あるいは夫)の年金が開始するといったケースに該当することを考えると、「総額でいくら不足するのか」だけを考えるのではなく、退職後の1年毎の収支もシミュレーションしておく必要があります。
 第三に、受給できる年金額そのものが、ここ数年減少してきていること、年金財政の均衡のため、将来についてもおそらく年金は減少するであろうことにも留意しておく必要があります。

 公的年金制度において他に留意しておく点としては、
  ・繰上げ受給、繰下げ受給の検討
  ・種別(第1号〜第3号)変更漏れがないかの確認(特に女性)
  ・60歳から働く場合の在職老齢年金
等があります。

 公的年金は原則65歳から受給できるとお話しましたが、ライフプラン上どうしても65歳前に年金収入が必要となる方も出てきます。その場合、請求することにより年金を65歳前の年齢から受給できる制度が「繰上げ受給」です。
 繰上げ受給することにより受け取れる年金額は、本来65歳から受け取れる年金から一定額を減額した額となり、その額はその後一生涯継続します。
 また一旦繰上げ受給を選択すると、障害年金の受給権に影響がでるなど、請求前に制度をよく理解しておく必要があります。
 逆に繰下げ受給を申し出ると、繰下げた月数に応じて年金額は増額された額を一生涯受給することになりますので、利用者にとってメリットの大きな制度といえるかもしれません。
 種別変更についても、過去の加入記録を確認するなどして、そのつど変更が行われているかをチェックし、行われていない場合は特例等を活用して過去の変更を申請するようにしましょう。
 在職老齢年金については、60歳以降も就業される方が増えており、関心を持っておられる方も多いと思います。
 在職老齢年金は、年金を受給しながら給与等の収入を得る場合、得ている収入の額に応じて一定割合を年金から減額する制度です。
 「年金収入の上乗せでと考えて働き始めたが、収入がある分年金が減額された」と、後から驚く方も多いようですので、60歳以降も働くお考えの方については、制度について事前に理解しておく必要があります。
 公的年金制度は5年に一度大きな改正が行われており、次回は平成19年の予定です。少子高齢化の影響で、年金制度についてはこれまでも様々な改正が行われておりますので、今後の改正には特に注意しておく必要があります。



生命保険の考え方

■遺族保障から医療保障へ
 生命保険に加入する場合、保険金額を決定する目安になるのが「必要保障額」という考え方です。
 「必要保障額」とは、世帯主に万が一のことがあった場合に、残された遺族がその後つつがなく生活していくために必要となるお金のことをいいます。
 退職後のセカンドライフについて考える場合、多くの方の場合、すでに子供の進学費用にも一通り目途がついており、万が一の際の遺族保障として考えなければならない金額は、実はさほど大きくないのが現実です。
 「これまで折角掛け続けてきたのだから」と、高額な生命保険を整理(減額)することを拒み、高い生命保険料を継続して支払い続けることよりも、年齢が上がるにつれてリスクの高くなる病気やケガに備えて、医療保障に保険関連コストをシフトすることを考える必要があります。


■医療保障の考え方
 現在は外資系の生命保険会社を中心に多くの医療関連保険が発売されています。
 加入を検討する側として、どんなことに気をつけなければならないのでしょうか。
 例えば保険料。何歳まで支払いが続きますか? 60歳で支払いが終わるタイプ、一生涯支払いが続くタイプなど様々です。
 給付日数は何日までですか? 1回の入院に対しては60日まで保障されるタイプ、180日、730日まで保障されるタイプなど、これも様々です。
 いつまで保障が続きますか? 一生涯続くタイプもありますし、一定期間毎に更新をしなければならないタイプもあります。
 これら以外にも、当然のことながら、どんな場合にいくらの保障があるのかも、選択の際の大切な要素になります。
 どのような医療保険を選択するのかは他人に決めてもらうものではありませんので、自分や家族の経済的な事情、価値観等を考慮しながら最もふさわしい選択を行ってください。というと「たくさんあって選べない!」という声が聞こえてきそうですが、そんな場合には中立的なアドバイスをしてもらえる専門家を通して判断してもらっても良いと思います。でもその場合でも、主体はあくまでも自分自身であり、決して言いなりになってはならないということを忘れないでください。


直近の入院時一日あたりの自己負担費用

■保険証券のチェックポイント
 他人の言いなりにならないための対策として、保険証券の簡単なチェックポイントをご紹介しておきます。保険証券には様々な内容が小さな字でたくさん記載されており、初心者にはなかなか理解しにくいものですが、最小限掴んでいただきたいポイントは3つあります。
 一つ目は契約期間、特に加入年齢と保険料の払込満了年齢を確認してみてください。
 「○○歳に加入した保険で、◎◎歳まで保険料の支払いが続く保険」、これだけです。
 二つ目は保障内容です。多くの場合、死亡保障と医療保障・その他保障がセットになっていると思われますが、それぞれの保障額がいくらで、保障期間がいつまでなのかを確認してみてください。60歳とか80歳まで続くものと思い込んでいた保障が、実は一定期間毎に更新しなければならないタイプ(更新時に保険料が上がるタイプ)だったり、通常の保険料とは別にまとまった金額の保険料を一括して払い込まなければならないタイプだったりと、以外に理解していない部分が多いはずです。
  そして三つ目が保険料。ここでは毎回の支払額だけでなく、その保険に加入していることで支払うことになる「保険料の総額(これまでに支払った額も含めて)」も計算してみてください。
 先述したように、保険は必要保障額に合わせて必要最小限の保障を準備すればいいわけですが、定期的な見直しをせず、ほったらかしにし
ていることで無駄に支払っている保険料の額の多さにあらためて気付く方も多いと思います。


■どのように見直すか
 自分で見直しプランを立てることも大切だと思いますが、十分な知識を持たないままに安易な見直しをすることはお勧めできません。
 「どうやら見直しが必要だな」と気付かれた方は、その後のプランニングについては、勤務先の機関を利用する、外部の中立なアドバイスの得られる専門家へ依頼されるなどの方法をお薦めしておきます。


 



資産運用の基礎

■退職一時金の活用について
 最後に資産運用、特に退職金の活用について触れておきます。
 仕事柄、多くの方のライフプランニング個別相談をさせていただいておりますが、「退職金依存症」の方がじつに多いことに驚いています。
 住宅ローンの一括返済の原資にと考えている方が最も多いようですが、それ例外にも、子供の教育費負担がまだ終わっていないのでその費用に充てるとか、子供の結婚費用だとか、老後の生活資金だとか、夫婦の旅行費用だとか、趣味・生きがい・車購入だとか・・・。
 もちろん新しい生活の始まりに際して返済できるものは返済してしまい、リフレッシュして、新たな気持ちで・・・という心理もわからなくはありません。ただしそれは、それら全ての費用負担が可能になるだけの退職金収入が見込まれることが前提です。
 大切なのは、頭に浮かんだ資金の活用プランと実際の収入予定額を基に、いかにバランスよく資金配分を行い、退職後に始まる長い人生を乗り切る準備を行うかです。
 以下において、退職金の活用を検討する際にポイントとなる点を挙げておきます。


1.60歳時点での資産状況の把握
2.60歳からのマネープラン
3.資産の取り崩しシミュレーション
4.資産の分配方法を決定
5.運用部分の想定利回りの策定
6.想定利回りに適切な商品の選定
7.金融機関の口座開設
8.スタート(毎年検証する)


 「1.60歳時点での資産状況の把握」で予想した額を「2.60歳からのマネープラン」に落とし込んだ場合、毎年いくらくらいの取崩しが必要かが見えてきます。
 生活に無理のない範囲で「4.資産の分配方法を決定」してみましょう。
 ここまでのシミュレーションで、将来の資金不足が心配になったら、不足分を補うだけの資産運用の検討も必要になってきます。その場合、あくまでも必要最小限の運用を心がけましょう。「○○年間で◎◎◎万円不足するから、その分を金利●●%の資産運用で増やしましょう」という考え方です。
 資産運用というと株式投資や先物取引、外貨運用を思い浮かべる方も多いようですが、仮に運用に失敗した場合のリカバリーを考えた場合、ダメージが大きくなる場合があります。資産運用の基本である「分散投資」を忠実に行い、求めるリターンと、受け入れ可能なリスクの程度をよく考えておく必要があります。


■手順
 まず最初のステップは目標の設定です。「なんのために、いつまでに、いくら」これだけです。
 目標金額(いくら)が分かり、そのために費やせる運用期間(いつまでに)が判明すれば、次のステップとして必要な利回りを算出できます。
 必要な利回りが判明すれば、あとはその利回りを達成するのに必要な資産配分を決定すればよいということになるのですが、実はどのような資産配分にすればよいかは、十分な知識を持っていない方には難しく感じられると思います。
 FPが中立的な相談に応じていますが、自分でやってみたいと思う方は、インターネット上にも資産配分についてアドバイスを得られる無償のソフトを提供している運用会社があったり、資産運用について書かれた書籍に詳しく手順が書かれていたり、様々なところで手法を得ることが可能ですので、勉強してみるのも良いと思います。
 ここまでのステップ(目標設定→必要利回り→資産配分)が終われば、最後に最適な金融商品を選択するという作業です。
 色々な金融商品がありますので、過去の運用実績やコスト、リスクをよく考えた選択を行いましょう。



お わ り に

 少子高齢化の影響による税金や社会保険料の
負担増を受けて、私たちの生活は金銭的な自由を失ってきています。セカンドライフに関しても、これまでのように社会保障に依存した生活は望めなくなっており、自助努力、自己防衛が強く求められる社会となっています。
 本日ご参加された皆様が、正しい年金や保険、資産運用知識を身に付けられて、経済的にゆとりあるセカンドライフをお送りになることを心よりお祈り申し上げます。
以上