ダイジェスト 「不都合な真実」 |
「私たちが直面している気候の危機は、ときにはゆっくり起こっているように思えるかもしれない。しかし、実際にはものすごい速さで起こっている。これほど明らかな警告が私たちの指導者たちの耳に届いていないように見受けられるのは、なぜなのだろうか? それを認めた瞬間に、道義的に行動を起こさなければならなくなることを知っているがために、警告を無視する方が都合がよいから、というだけなのだろうか? そうなのかもしれない。しかし、だからといって、不都合な真実が消え去るわけではない。放っておけば、ますます重大になるのである。」 − アル・ゴア − |
今から17年前のある日、ゴア氏は一番下の息子が命を落とすかもしれないというほどの事故に遭い、それをきっかけとして「自分にとって大事なことは何なのか」ということを見直し始めた。そして、「いつも自分の家族のことを第一に考えること」、「仕事では気候の危機を最も重要な課題とすること」この2つを誓った。 17年前の出来事が起きて、ゴア氏は最初の著書「地球の掟―文明と環境のバランスを求めて」を書き始めた。そして「地球の掟」の刊行後1年もたたないうちにアメリカ副大統領に選出され、最終的には8年間、クリントン−ゴア政権の一員として気候の危機に対する新しい政策という意欲的な政治課題を追求する機会を手に入れる。 しかしながら、議会が変化に対してどれほど強硬に抵抗するものかということを思い知らされ、その反対がますますひどくなってきたことを、落胆の念を募らせながら見るしかなかった。 そこでゴア氏は2000年のアメリカ大統領選挙の出馬を決意したが、選挙の結果は大接戦の末、鍵を握るフロリダ州での投票の再集計の中断を最高裁判所が判決したことから、現ブッシュ大統領に敗れることになった。 現在は2つの会社を興し、アップル・コンピュータ社の取締役やグーグル社の上級顧問にもなっている。初めのころは、もう一度大統領選に出ようかとも考えたが、この数年の間に自分はほかのやり方でも役に立つことができるし、それが自分にとっても本当に楽しいことなのだと知ったのだった。 2000年の大統領選挙後にゴア氏がやろうとして決意したことの1つは、地球温暖化についてのスライド講演を再開することであった。最初の著書「地球の掟」を書き始めたころに作ったスライドも、その後何年もかけて追加や改良を重ね「今起こっている温暖化の大部分は人間が起こしているものであり、私たちがただちに行動をとらないかぎり、地球という私たちの故郷にとって取り返しのつかない結果をもたらしてしまう」ということを説得力をもって伝えられると思えるまで練り上げていった。 6年間の間、ゴア氏は世界中を飛び回り、耳を傾けてくれる人にはだれにでも、自分の編集したこの情報を見せ、大学へも、小さな町へも、大都市へも赴き話をしてきた。人々の考え方を変えつつあるという手応えは強くなってきたが、これはとても根気のいるプロセスでもある。 こうした講演活動を通じて知り合った環境活動家でもある映画プロデューサーが、このスライド講演を映画にするというアイディアを提案し、さまざまなスタッフに恵まれて今回の映画化が実現することになった。そして、全体のメッセージをわかりやすくするために、写真やグラフィックスを入れた、これまでにない本として、映画と同じタイトルの「不都合な真実」という本も発刊されている。 ゴア氏はこの映画と本からの収入をすべて「温暖化に立ち向かう果敢な行動を支持しよう!」と米国の世論を動かそうとしている超党派・非営利の取り組みに寄付している。 ゴア氏が望んでいるのは、映画を見たり本を読んだりした人々が「温暖化は科学だけの問題ではない。政治だけでの問題でもない」と感じ、これは実は「倫理(モラル)の問題なのである」ということに気づいてほしいということである。 |
「私たちは、頭だけではなく心で、今求められている行動を考えることができるのだろうか。これは道徳的、倫理的、そして精神的な課題であるといえる。私たちはこの難題を恐れずに喜んで迎え入れなければならない。待っていてはいけない。キング牧師の言葉を借りると『明日は今日』なのだから。 私たちは未来の子どもたちに残すべき地球を守る義務がある。未来の子どもたちに対して、単なる約束ではなく、行動で答えることができる。その過程で、私たちは子どもたちに感謝してもらえる未来を選ぶこともできるのだ。」 |
とゴア氏は述べている。 |
ゴア氏は最後にこのように結んでいる。 「将来を守るため、私たちはもう一度立ち上がらねばならない。」 |
<あなたにも、すぐできる10のこと>
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以 上 |
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