一人ひとりの「人」に焦点を当てたビジョンづくりを
執行委員長     
関 谷 久 之


は じ め に

 本日は休日にもかかわらず「ビジョンづくり委員会第4ステージ」に参加いただき心から感謝申し上げます。第3期目となったこのビジョンづくり委員会では、「働くということについて考えよう」をメインテーマとして、第1ステージでは(株)マンダムの桃田さん、第2ステージではナブコ労働組合の柳田さんと基幹労連本部の伊藤さん、そして第3ステージでは兵庫県の清原さんを講師にそれぞれの立場から「働く」ということに対する講演をして頂きました。また第3ステージでは東京ブロックの寺西さん、研究所ブロックの小林さんに「自分にとっての働くとは」をテーマにご自身の体験にもとづく話もして頂きました。
 本日は第4ステージとして、本社ブロックの高野さんと播磨ブロックの君野さんに「自分にとっての働くとは」についてお話しして頂くことにしています。
 お二人の話の前に、なぜ今回のビジョンづくり委員会のテーマを「働くということについて考えよう」にしたのかについての経緯を少しご紹介させて頂きたいと思います。


発端は2004年のユニオン要求

 これまでの経緯を少し振り返ってみたいと思いますが、そもそもは2004年総合労働条件改善交渉において、ユニオンから「中期的基本賃金の改善要求」を行ったことが発端となっています。この要求の趣旨は、「将来にわたって企業が永続的に発展するためには、高い技術力を保持し、競争力を強化していく必要があるが、その技術力を支えるために職場活力を維持することや、優秀な人材を確保するためには、魅力ある労働条件が必要不可欠であるとして、2010年を目途に新たな財源投入によって基本賃金を製造業平均まで回復させる道筋を明らかにする」という内容でありました。
 これに対し会社からは、「真に強い『総合環境ソリューション企業』の実現に向けて、労使ともに全力を尽くすことにより、収益力の向上と財務体質の改善を図るとともに、労働条件の向上を目指すこととし、競争力の維持・強化とそれを支える職場活力の維持を図るという観点から、これまでの良好な労使関係を踏まえつつ、従来どおり幅広い視点で、労働条件全般について引き続き労使で議論を行う」旨の回答があり、ユニオンとしても中期的な賃金水準回復に向けた具体的な道筋が示されなかった点については不満が残るものの、幅広く労使で論議を行うという点については一定の理解が得られることから会社回答を了解したものであります。
 その後、本年1月に会社から「労働条件全般に関し、幅広く論議する場」(幅広論議)の開催についての申し入れが行われた訳でありますが、同時期に一時金業績連動型決定方式導入に向けた労使協議を行っていたことと、ユニオンとしては論議テーマを決定するにあたって、神鋼連合内で先行して幅広論議を開始した神鋼労組での論議経過を踏まえることの重要性は理解しつつも、例え時間がかかったとしても、当社固有の問題を抽出した上で、実効のある論議をすべきであるとの判断にたち、ユニオン内部での事前学習とコンセンサスづくりを先行させることにしました。
 このような経緯をふまえて一時金業績連動型決定方式の労使協議が終わった4月に、「『働く』ということについて考えよう」をメインテーマとした第3期ビジョンづくり委員会を立ち上げ、行政、労働団体、民間企業の3つの立場から見た「働く」という点についてのセミナーを開催し、今日的な「労働」と「雇用」に関する学習を行ってきました。


8つのテーマを労使で抽出し
論議のスタートを

 10月15日に労使による第1回幅広論議が開催されましが、ユニオンから提起したテーマ6項目と、会社から提起されたテーマ4項目を摺り合わせた結果、次の8テーマについて労使によるフリー論議が行われることになりました。
(1)  今後の雇用のあり方について(ベテラン層の働き方など)
(2)  「存在の文化」から「効率の文化」へ向けた勤務のあり方について
(裁量労働制など新たな就業制度、休暇に関する諸課題など)
(3)  福利厚生制度全般のあり方について
(4)  技能・技術の継承と人材育成について
(5)  安全・衛生や健康に配慮された職場環境の整備について(メンタルヘルス対策など)
(6)  会社に所属する満足感の充実について
(7)  今後の法改正への対応について(新企業年金法など)
(8)  年間総収入のあり方について(年収の安定性の確保)

 11月上旬には第2回目が開催されることになりますが、2006年4月の高年齢者雇用安定法改正を目前に控えた、60歳超雇用の問題と、当社でも看過できる状態にないメンタルヘルス対策ついての論議を先行させる予定としています。


マクロ的な視点で本質を
見極めることが問題解決の王道

 私たち執行部は、今回、10月3日から7日の5日間にかけて開催したブロック会議の中で、職場が現在抱えている問題についての率直な意見をお聞きすることができました。
 事業統合による新会社設立から丸2年が経過した訳ですが、所属する部門によって統合の影響を受けた度合いは大きく異なり、また部門間での繁忙感の差も極めて大きく、統合直後の期待と不安が入り交じり混沌としながらも全員が一つの目標を見ようとしていた熱気漂う雰囲気が落ち着いた今こそ、もう一度足下を見つめ直す時期に来ているのではないのかという印象すら受けました。
 こうした職場の実感からは、今回労使で論議するテーマは現実離れした意味のないもののように受け止められている方もいらっしゃると思います。しかし、足下の問題を改善するために、マクロ的な視点でその本質を見極め労使がフリーに議論することこそが問題解決の王道であると私たち執行部は考えています。ぜひこの点をご理解頂き今後の労使論議の展開を注目して頂きたいと思います。


一人ひとりの「人」に焦点を
当てたビジョンづくりを

 「働く」というテーマは、なかなか難しいテーマであると思います。もちろん生活の糧のために人は働くわけですが、ではお金のためだけに「働く」のかと言うとそうでもありません。「働く」ということを通じてお金以外に得るものはたくさんあります。しかし、その一方で「働く」ことによって悩むこともあり、その結果、健康を損ね場合によっては自らの命を絶つという不幸な出来事もあります。本日は、冒頭ご紹介したように本社ブロックの高野さんと播磨ブロックの君野さんから「自分にとっての働くとは」をテーマとしたお話をして頂きますが、私はユニオンの会員の一人ひとりに、それぞれにとっての「働く」ということに対する考えや思いがあると思います。たまたま同じ会社で働き同じユニオンに所属していても、その一人ひとりが人生の途上において背負っている荷物の重さも千差万別であると思います。その多様性をお互いが理解し尊重しあうことがひとりの人を大切にする強い組織の源泉であると言えます。本日も二人の話を聞き、自分自身にとっての「働く」ということについて考え、そしてビジョンを描いて頂きたいと思います。