「第3期ビジョンづくり委員会」のスタートにあたって
「働く」ということについて考えよう
執行委員長 関 谷 久 之


「めざせ一流・脱三流」から始まった
ビジョンづくり委員会

 第3期ビジョンづくり委員会のスタートにあたり主催者を代表して一言ご挨拶させていただきます。
  このビジョンづくり委員会は、20代を中心とした若手メンバーにより、10年後、20年後、そして30年後のビジョンについて考えていくことを目的に2年前から開始したものです。
  第1期ビジョンづくり委員会は、会社の業績が低迷し、さまざまな会社再建策が講じられる中、何とか若手の活性化を図りたいという思いから、「一人立つ精神で……めざせ一流 脱三流」をメインテーマに2003年1月から開始しました。「変化を恐れず立ち向かう強い組織集団に何が必要か」、「どんな会社だったら良いのか、そのためにユニオンは」などを各回のテーマとしながら本を読んだ感想を語り合ったり、外部講師の講演を聴くなど約1年間にわたってディスカッションを続けました。
  第2期ビジョンづくり委員会では、希望あふれる統合新会社のスタートにあたりみんなの共通テーマである「自分にとっての環境ソリューションとは」をメインテーマとして、全6回シリーズで「環境」をテーマとしたセミナーを開催しました。昨年7月には、猛暑の中、産廃不法投棄問題の現場となった瀬戸内海に浮かぶ豊島に遠足に行き、民宿で缶ビール片手に「環境問題」について語り合ったことも楽しい思い出となっています。


書店に並ぶ「働く」をテーマとした書籍

 いよいよ本日から第3期ビジョンづくり委員会がスタートすることになりましたが、今回のメインテーマは、「『働く』ということについて考えよう」としています。
  最近書店に行くと、「働くということ」、「人はなぜ働くのか」、「プロ論」等々、「働く」ということをテーマとした本が数多く出版されていることに気づきます。数年前に「コーチング」といわれる人材育成論の本が爆発的に売れていた頃から少し様相が変わってきたように思います。つい先日もNHKの番組で正社員とフリーターの格差などについての討論会も放送されていました。ニート(通学も仕事もしておらず職業訓練も受けていない人々)という言葉も新聞などでよく目にするようになりました。
  当社で働く人たちに、こうした社会現象が直接関係があるとは思いませんが、少なくとも世間の人たちが「働く」ということに対して、「閉塞感」もしくは「喪失感」からなのか、「価値を見出したい」という希望からなのかはわかりませんが、関心を持ち出したということだと私は思います。


法律用語の枠を超えた「労働者」の意味

 先日、今年の新入社員に話をする機会があり、私はこんな質問を投げかけてみました。「自分のことを『労働者』だと思いますか?」。何人かの人はそう思うと手を挙げましたが、そうは思わないという人も同じく何人かいました。そう思わないと答えた人にその理由を尋ねると、「『労働』という言葉には、お金のためにいやな仕事を嫌々させられるというイメージがあるので自分は『労働者』だとは思いたくない」、「社会に役立ち自分も納得出来る仕事を自分の意志で取り組みたいので自分は『労働者』ではないと思う」。こんな答えが返ってきました。前向きでとても良い意見だと思いました。そのあと私が新入社員のみなさんに言ったのは、「『労働者』というのは法律用語だと思って下さい。労働基準法には、第9条で『労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。』と定義されています。このことから言葉のイメージにとらわれるのではなく、みなさん方も立派な『労働者』だと自覚して下さい。」という内容なのですが、あとになって、言葉の説明にはなっていても、新入社員のみんなの前向きな発言に対しては何の答えにも説明にもなっていないなと少々考えさせられました。


「執念と気概」平田社長のメッセージ

 今年の年頭式典で当社の平田社長は、「本年が今後の当社を築いていく上での要の年となります。市場環境の厳しさはあるにせよ、当社の存亡を賭けて、現状を打破し、05〜06年度の受注計画・目標利益を達成していかねばなりません。そのためには、全員が、執念・気概を持って課題解決・目標達成に挑んでもらいたいと思います。私達は、働かされているのではなく、自分のため、家族のために働いているのです。自らの誇りをかけて、目標に挑戦していきましょう。」とおっしゃいました。
  この中に、「働く」ということについて大切な2つの考えが含まれていると私は思います。1点目は「執念・気概を持つ」ということです。漫然と与えられたことに時間を費やすのではなく、目標に向かって果敢に挑戦することこそが「働く」ことの醍醐味だと思います。2点目は「誇りを持つ」ということです。このことが「働かせている」のではなく、自分の意志で「働らいている」という原動力になることは間違いないと思います。
  とはいうものの、会社内での日常の業務は、こんな満足感や充実感を感じられるものだけではありません。「何でこんなことをしなければいけないのか」、「何で自分がしないといけないの」と落ち込んだり気が滅入ったりすることも多々あるでしょう。そこで大事なことは、目標、ビジョンを持つことです。短期的に評価するのではなく、少なくとも数年間のレンジで自分の夢、目標を描き、そこに向かう角度が平均すると常に上向きになっているのかを検証していくことだと思います。また、その指標は、決して会社内だけにあるのではなく、時には家族であったり友人であったりすることもあると思います。結婚して子供さんがいる場合は我が子の成長がそのバロメーターになることもあるでしょう。


中井政嗣氏の言葉「仕事はウソをつかない」

 第1期ビジョンづくり委員会での様々なディスカッションをまとめた冊子(ユニオンオープンハウス要録集Vol.30)に、お好み焼き「千房」の社長である中井政嗣氏が「育つ人・育てる人」と題したメッセージを寄稿して下さいました。この中で、中井氏は「先行き不透明な時代とはいえ、夢や目標の無い人生ほどむなしいことはない。目標とは『あなた、どこに行きたいの?』つまり行き先です。」と目標をもつことの大切さを強調され、「人をあてにするうちはダメ。一人では何も出来ないが、一人から始めなければ何も起こらない。自分の決心がついたら、自分を信じていたら必ず道は拓けるもの。またその過程において色々な壁にぶち当たる。しかし、その壁こそが成長の証し。壁を乗り越えて初めて、その成功のコツが分かり、努力したことが快感に変わる。仕事はウソをつかない。努力は必ず報われる。」と書いて下さいました。
  これは、まさに「一人立つ精神」で、事業を立ち上げ人を育ててきた中井氏ならではの至言であると思います。


「働く」ことによって病むことも
「ビジョン」と「考働」が大切ではないか

 人は「働く」ことによって収入を得て、やりがいを感じ人生の充実感を得ています。しかし、その一方で「働く」ことが原因となって心身の健康を害することもあります。このことは大きな社会問題であるとともに当社にとっても「対岸の火事」とは言えない状況となっています
  本日は、第1期ビジョンづくり委員会にも講師として来ていただいた日本マーケティング協会理事で(株)マンダムの常務取締役である桃田雅好さんを講師としてお招きしています。桃田さんからは、私たちユニオンの理念の中で採用した「考働する集団」の「考働」という言葉をいただきました。
  私は「働く」ということを考えていく上において、この「考働」という言葉が非常に大きな意味を持つのではと感じています。
  「働く」ということを考えていくのに際して、本日はもう一度、桃田さんからその原動力となる「ビジョン」と「考働」についての基調講演をお願いしたいと思います。
  今回は約半年間の予定ですが、みなさんと一緒に大いに考え、語り合い新しい「ビジョン」を描いていきたいと思いますので、積極的な参加を心からお願いし、スタートにあたってのご挨拶とさせていただきます。