豊 島 宣 言

 先人から受け継いだ豊かで美しいふるさと豊島、そして国民共有の財産である瀬戸内海を子孫に継承していくことは、現在に生きる私たちすべてに課せられた責務です。
 私たちが25年前、豊島に産業廃棄物が持ち込まれることを知って、その阻止のために立ち上がり、大量の産業廃棄物を、豊島から完全に撤去させるためにたたかい続けたのは、まさにこの思いからでした。
 そして、この深刻な事態を招いた香川県に、その責任を認めさせ、完全撤去をさせるために、1993年11月11日、残された最後の手続きである公害調停を申請したのもまさにこの思いからでした。
 それ以来今日までの道のりは、私たちに過酷な苦難と犠牲を強いるものでしたが、私たちが叫び続けた願いは、ついに広範な世論を動かし、支持の輪を次第に広げていきました。
 私たちは、自らを信じ、この世論に支えられて、暗闇の中を光明を求めて一歩ずつ前に進むことができました。
 去る5月26日、公害等調整委員会は、第36回調停期日において、産業廃棄物が平成28年度までに完全撤去されること、この事業に私たちや専門家が関与すること、などが盛り込まれた最終合意案を提示しました。
 その後、香川県は、県民や私たちにその責任を明確に認め、私たちに対して、「心から謝罪の意を表する」ことを表明し、香川県議会は6月1日この最終合意案を承認しました。
 いま、私たちもまたこれを受け入れることを決議し、6月6日調停成立の運びとなりました。
 ここに、香川県は自らの非を認めて、私たちに謝罪するとともに、産業廃棄物を完全撤去することになります。
 私たちが、繰り返し繰り返し叫び続けてきたことが道理にかなった正しい要求であったことが認められる日がついにきたのです。私たちは、そのことを喜ぶとともに、これからはここに至るまでの長く苦しい道のりにとらわれず、豊島が美しい瀬戸内海の自然と調和する元の姿に戻るよう、行政と住民がともに、協力して、新しい価値をつくり出すという「共創」の理念に基づいて行動する決意をしました。
 私たちは、生まれてくる子供たちに、「誇りをもって住み続けられるふるさと」を引き継いでいくという新たな取り組みのスタート台に立っています。
 私たちは、この25年間で得た貴重な教訓と成果を深く心に刻み、これをも子供たちに引き継がせつつ、世界に一つしかない豊かな豊島を築いていく決意を、ここに高らかに宣言します。
2000年6月3日 豊かな島を実現させる豊島住民大会