瀬戸内海に浮かぶ 「豊かな島」で視たこと考えたこと |
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第2期ビジョンづくり委員会委員長 桂 健 治 |
はじめに |
豊かな島と書いて「てしま」と読みます。文字通り豊かな自然と心を持つ人々が住む豊島に産業廃棄物が不法投棄され、兵庫県警により摘発されたのは今から14年前の1990年のことです。テレビや新聞でも大きく報道され、豊島は「ゴミの島」、「毒の島」として全国に知られるようになりました。 |
「豊島」について |
豊島について簡単にご紹介します。豊島は瀬戸内海の東部、小豆島の西方約4キロメートルの海上にあり、面積は約14平方キロメートル、周囲は約20キロメートルで、香川県では小豆島に次ぐ大きさの島です。国立公園に指定されているだけあって、豊島から望む瀬戸内海はどこからでも絵になるといっても過言ではありません。島内には東洋一のオリーブ園といたるところにみかん畑があります。 |
豊島事件の経緯 |
国内最大級ともいえる廃棄物不法投棄事件の経緯についてまとめてみたいと思います。 |
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中間保管・梱包施設/特殊前処理物処理施設 | 中間処理施設 |
本を読んで予習をしました |
現地を視察する前に、まずこの事件の経緯を勉強しようということで、私たちはこの事件の豊島住民弁護団副団長であった大川真郎弁護士の著作である「豊島産業廃棄物不法投棄事件……巨大な壁に挑んだ25年のたたかい」を読んでみることにしました。この本の前書きには次のように書かれています。 |
豊島産業廃棄物不法投棄事件は、わが国最大規模の不法投棄事件といわれている。 この不法投棄は一廃棄物処理業者によって、国立公園の中で、10年もの間公然と行われた。
しかし、住民と弁護団は、懸命にたたかい続ける中で、少しずつ撤去の実現に向かって展望を切り拓いていった。 本書は、僅か1400人の住民が、どのように権力の「巨大な壁」に挑み、勝利したかを明らかにしたものである。 |
25年にも及ぶこの事件の経緯を弁護士の立場で冷静に、かつ客観的に書きとどめた本書を読んで委員会のメンバーは様々なことを感じ取ったようです。メンバーの感想文を紹介したいと思います。 |
また、この不法投棄は今起こっている様々な環境問題の典型的な例であり、単なる対岸の火事ではなく、自分自身も少なからず関わりのある事件であると感じました。豊島の不法投棄された廃棄物は、なんとか処理・復旧へと動き出しましたが、大量生産・大量消費という根本的な原因についてまだまだ取組が十分でないという大きな問題が残っています。つまりはリサイクル化の徹底やゴミ自体の排出量を低減する活動をしていかない限り、廃棄物の処分場は不足し新たな不法投棄を招くという現象はなくならないということを意味すると思います。ただ自分自身の現実問題に置き換えてみると、今の生活から離脱し、リサイクルの徹底・ゴミの排出を抑える生活に急激に切り替える事は非常に難しいため、まずは小さなこと(ゴミの分別の徹底など)から取り組んでいくしかないのではと思います。廃棄物の問題を含めた環境問題は明確な解決策がとりづらいものですが、一人一人が意識を改革していけば、問題解決への第一歩になると思います。今回この豊島の不法投棄の本を読む事によって、自分自身の意識改革へのきっかけの一つになったと感じています。 |
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現在社会でも、大量生産、大量消費は続けられているが、リサイクルということも行われている。しかし、リサイクルは大切なことであるが、リユースや無駄なものは生産・消費しないことが重要であると思う。最近、新聞で直島の処理施設について読んだが、この処理施設は豊島の多くの人々の努力のもとで実現した施設であることを思うと複雑な気持ちである。処理施設も大切ではあるが、その処理物が発生しない、少なくとも発生しにくいものの生産・消費を考えていかなければならないと感じた。 |
今後は前述からのような環境問題が起こらないのは当たり前で、私たち「環境問題解決企業」が直接活動し影響を与える立場である事とそれらに取り組む意義と責任を改めて感じる事のできた著書でした。 |
不法投棄の問題は全国に大小さまざまな形で起こっている。周囲の人たちや地球全体の環境には目を向けないで「今の自分さえ良ければいい」という人間のエゴが生む問題であり、人間の根本的な考えを正す必要がある。直接的には不法投棄の業者とそれを許した行政が悪かったわけではあるが、一般市民の生活を含めた産業廃棄物を生み出す人間社会自体も見直すべきとも言える。まずは自分自身の生活を見直してみることも必要、と考えさせられた。行政は市民の生活を良くしようとさまざまな事業を推進するが、時としてその内容が住民の意図と反する方向に向かっていることがある。雇用の問題を解決するために、地球の環境を破壊していることもある。公共事業に依存している面のある当社としては、広い視野で見て本当に地球環境のためになる設備を納めているか、ということを再度確認して間違いなければ自信を持って拡大していきたいと思う。 |
私のように、他で起こっていることに対して無関心でいることのしっぺ返しが豊島に現れ、最終的にここまで大きな環境災害になっている。 環境汚染として様々な現象が起こっているにも関わらず、それを認めず、行政として何もしなかった香川県や、不法投棄を行ってきた業者に対し唖然とするが、関心を持たなかった我々も同罪である。 これを教訓として少しでも環境問題に目を向ける様にしたいと感じた。尚、一度汚染された環境をどこまで回復させることができるのか、豊島の今後に期待したい。 |
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今回参考図書を読み、世間が「環境問題」に注目するようになった発端として「豊島問題」があることを改めて認識しました。この事件に関する最大の問題は、行政の廃棄物に関する認識の甘さが挙げられます。豊島住民の23年に及ぶ戦いは、行政のこの認識を改めさせる戦いであり一定の勝利を得ましたが、この戦いが、世間の「環境」に対する認識を改めさせ、1自治体だけでなく国も動かしたことは驚異だと思います。70年代という廃棄物問題など認知されていなかった時代に、豊島住民が行政に対して行った戦いは価値あるものだと思います。 現在、法規制も進み産廃問題に対する社会の関心も高まっている中、逆に産廃の不法投棄は増加し、なくなっていません。循環型社会の構築は理想ではありますが非常に難しく、企業・住民・行政それぞれの役割の中で、目標に向かってできることを模索しつづける必要があると思いました。 |
また、不法投棄によって汚染されたサイトを修復するためには、莫大なお金と時間がかかることがよくわかりました。特に直島での処理施設は、産廃をただ無害化処理するだけではなく、極力リサイクルするとの一歩進んだ思想には賛成であり、産廃を処理するのは大変難しいですが今後の状況に関心を持って見ていきたいと思います。しかしながら、修復するための費用は私たちの税金が使われ、汚染した側の産廃業者はほとんど負担しない(できない)現状は問題であると思いました。今のままでは不法投棄した者勝ちであり、不法投棄は一向に減らないと思います。今後このような問題が起きることがないよう、法律や行政のシステムを変えていく必要があると思います。また、ごみを排出する側の私としても、ごみの排出を抑えることに努めることにより、産廃の不法投棄の問題を解決できるよう協力していく必要があるのではないかとも思いました。 |
最近、他の地域でも同様のことが起きていることを小耳に挟んだが、この事を教訓として、地方や国は法や社会基盤の整備を、企業は技術力の向上を、そして国民は意識の向上を図る必要性を感じた。 |
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ほとんどのメンバーは、豊島問題について「知っているがよく知らなかった」という認識だったようです。その解決に至るまでに25年もの歳月を要した「不法投棄」の問題が、悪質業者の責任によることはもちろんですが、行政の対応や法律の問題など様々な要因が絡み、本質的には大量のゴミを排出する大量生産・大量消費という社会のシステムそのものに起因していることに、多くのメンバーは問題意識を持ったようです。 たった一冊の本ですが、基本的な情報は頭にインプットした上で、いよいよ現地を訪問することにしました。 |
豊島に行ってきました |
7月3日(土)、梅雨明けを思わせるような猛烈な暑さの中、参加者15名は岡山駅に集合しました。路線バスに約1時間揺られ宇野港まで向かい、瀬戸内海の小島をつなぐ水上タクシーで約30分、水しぶきを浴びながら豊島の家浦港に到着しました。 家浦港では、廃棄物対策豊島住民会議の多田さんが視察団の一行を出迎えてくれました。豊島交流センターの会議室で概要の説明を受け、多田さん運転のマイクロバスで不法投棄現場の視察に出発しました。 違法業者による産廃不法投棄が始まって強制捜査が入るまでの十数年間で、何と50数万トンの有害廃棄物が島外から持ち込まれ、多田さんの話では「核廃棄物以外は何でも埋まっています」とのこと。現在では投棄現場一面に遮水シートが貼られ投棄されたゴミそのものは覆い隠されていますが、その面積の広さと周辺の豊かな自然との不釣り合いさは何とも異様な光景として目に映りました。
公害調停成立後、暫定的な環境保全措置工事が行われ、どす黒い水と異臭が漂い「死の海」と化していた北海岸も、汚染水の流出を止める深さ18メートルの遮水壁が350メートルの長さで敷設されたことにより、きれいな海岸線へと戻りつつあります。 昨年、ようやく中間処理施設が稼働し本格的な処理が始まりました。50数万トンの産廃と汚染土壌の処理には、今後10年の歳月が必要で、設備費と運転費用など総額500億円もの巨費が投じられることになるそうです。
今回、私たちを案内してくれた多田さんは、県外でサラリーマンをしていたのですが、数年前に実家である豊島にUターン。現在はイチゴ農園を経営しながら、全国から来る見学者の案内役を行っています。「豊かな島と書いて『豊島』です。水量が豊富であるため、かつては稲作も盛んで、とくに豊島で採れるミカンは高品質であることから高値で取引されていました。しかし、ゴミ問題での風評被害は深刻で豊島産というブランドは市場で通用しなくなりました。また30年前には3000人いた島民も、現在では1240人と半分以下に。65歳以上の高齢化率も47%と高齢化と過疎化の問題も深刻なものとなっています。今、豊島にもっとも必要なことは、以前の自然豊かな島『豊島』にまずは戻すことであり、その中で農業や漁業の振興を図っていくことだと思います。」と多田さんは語っていました。
駆け足となった豊島での視察を終え、一行は水上タクシーで豊島の隣に浮かぶ直島へと向かい、翌朝、直島に建設された中間処理施設を見学し岡山へと戻りました。
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豊島に行って視たこと考えたこと |
たった二日間の駆け足の見学でしたが、「百聞は一見にしかず」、視察団のメンバーは実に多くのことを感じ考えました。自然の豊かさのみを追求しゴミの島外撤去を実現させた豊島の人々。中間処理施設を誘致し、そのこととの因果関係は定かではないものの少なくとも豊島との比較において経済的な豊かさと発展が散見できる直島。メンバーの率直な感想を紹介します。 |
● | 実際に豊島を訪れて住民会議の方の生の声をきいて、今までの(事前に関連著書は読んだものの)認識は甘いものだと思いました。住民会議の皆さんの話を聞けば、自分の周りでいつ起こってもおかしくない問題だということがわかるし、おそらく神戸方面からでた産廃も豊島に運ばれていたはずで、日本ひいては世界的問題と実感しました。 |
● | 豊島、直島の島としての差は、そのまま資本主義経済と地球環境問題の矛盾を示しており、今後の大きな課題ではないかと思います。 |
● | 不法投棄という言葉をよく耳にしますが、実際の不法投棄現場に足を運んだのは今回が初めてです。最初豊島に船で乗り付けたときあまりにものどかな島であることにまず驚かされましたが、本当に驚いたのは豊島の良い面でなく悪い面でした。というのも車で案内していただいた島の裏側はのどかな場所はなく、自然が悲鳴を上げているような閑散とした干からびた土地でした! 大自然には不釣合いな近代的な施設とビニールシートで覆い隠された産業廃棄物の山……。私として変わり果てた自然の惨めさに絶句してました。なぜ一人のエゴのために島人・豊島が犠牲にならなくてはいけないのだろう。なにより腹立たしかったのは、豊島に産業廃棄物を持ち込んだ本人は、事件当初法律で罰則に対して定められていなかったため50万円の罰金だけで済んだということでした。この一人の男のために大自然がめちゃくちゃに破壊されたのだと思うと悔しい気持ちになります。厳しい法律ができてからは、このようなことをする人は少なくなってきたと思いますが、今後ないとも限らないので国には産業廃棄物不法投棄により目を光らせるとともに地方には行き届いた指導をしてほしいと思います。 |
不法投棄現場のすぐそばに建つ資料館で |
● | 訪問したときには、既に埋め立てや整備がされていたので、そこに不法投棄がされていたことは見た目には分からない状態となっていましたが、その当時の写真や樹脂で固めた廃棄物の展示品、廃水処理の原液の臭いを嗅いだりするとやはりこの場に異様な廃棄物が存在していることが分かった。感想というと、なぜこのような状態になるまで県は放置していたのかということになる。豊島で起こったことを今、表ざたになっていない不法投棄現場を抱える自治体にもよく理解していただき第二の豊島を作らないように先手を打っていただきたいと思う。県には大量にある廃棄物を一日でも早く処分させ、豊島を豊かな自然あふれる島に再生させて島の人が誇れる島に戻していただきたいと思う。 |
● | 実際に不法投棄現場を視て感じたのは、既にシート敷設等の処置がなされていたので、先に大川先生の著書を拝読させていただいた時に感じた壮絶さはあまり感じませんでした。しかし、豊島のあの風光明媚な環境の中であの場所だけがぽっかりと文明のしわ寄せに遭っていた事実には、非常に違和感を感じました。あの入り江の海水があそこまで黒くなっていた場面を想像するだけで気分が悪くなります。溶融処理を含め、爆発事故等もあり、情報公開、管理の徹底等問題はある様ですが、早く処理が終わると良いと思います。そして、処理が終わった後は、環境のモニュメントとして、この事件がどうして起こり、どのような経緯で産廃が撤去、処理されたのか、ずっと語り続かれていくことを祈っています。 |
● | 私たちが訪問したのは、すでに産廃の処理処分が進行中であったため、不法投棄現場もシートで覆われており、表面上はここで史上稀にみる悲惨な事件がおきたという実感は沸きませんでした。しかし、現場を説明していただいた多田さんをはじめ、地元の方の話を聞くうちに、これらの廃棄物を適正に処分されているかをよく監視することが必要であるとの認識を持ちました。さらに、これらの廃棄物がすべて撤去、処分された後に、この現場を、この豊島をいかに再生していくことが重要であり、また一番難しい課題であると感じました。いまだ「これにて一件落着ではなかった」ことを認識できたのが一番の収穫でした。 |
● | 合法的であったとしても、最終処分場はあまり気分のいいものではありません。ましてや不法投棄の現場であれば、なおさらです。よく撤去までこぎつけることができたな、という感じです。現場見学説明の中で、「急速に発展した自動車の廃棄物が豊島に集まった」といわれていました。いまとなっては、自動車のない生活も成り立ちませんし、先代が追い求めた豊かさとは違う何かを、私たちの世代は築きあげなければならないでしょう。物質的な豊かさと表裏一体である廃棄物を、極力発生させないことが大事であると強く感じました。 |
● | 廃棄物を処理する最も安価で、安全な方法かどうかわかりませんが、あんなにお金をかけなくても……と思いました。 |
北海岸には深さ18m、長さ350mの鋼矢板製遮水壁が打設された |
● | 皆の会話の中でもあったが、日本における不法投棄への罰則は厳しいものではない。そのため、罰金以上に稼げるとすると、不法投棄業者は減少することはない。これらの業者に依頼する周囲の業者を含め、取り締まることを考えていく必要がある。また、これらの不法投棄を見逃してきた行政に対しても、今後は責任を追及し、行政自体にも罰則を与える必要があると思う。 |
● | 今回わざわざ土日を使ってビジョンづくり委員会の一環として豊島・直島の見学に行きましたが、普段は不法投棄現場や産業廃棄物処理場を直接見ることができないため参加してみることで良い経験ができたと思います。今回、不法投棄を行うことでどのような悲惨な結末(環境・自然破壊)が待っているのかがわかりました。一度果ててしまった自然はなかなか戻ってきません。我々は便利さを求めるあまり、不必要なものを排除しようとします。その不必要なものを押付けられたのが豊島という島だったのでしょう。私の上司が過去に言った言葉で、「見て見ぬふりは同罪やで!」といった言葉があります。私たちは、普段業務中でも慣れ親しんでいる人にはそれがダメとわかっていてもついつい言いにくかったり、言わなかったりすることがあります。言いにくいかもしれないですが注意していれば事故は起きなかったのにという場面に遭遇するかもしれません。事故が起きてしまえば言わなかった方にも少しは問題があるのです。今回の豊島事件の発端もこのような些細な注意ができなかったことだと思います。今回の豊島問題を発生させた人は、住民にもお構いなしに殴ったりする人だったのだと聞いておりなかなか注意することが大変だったと思いますが、何かその時にアクションを起こしていれば変わったのじゃないかと思います。豊島を参考例にするのは話はかけ離れている気もしますが、私たちの会社が「自然環境との共生・調和」を理念とする以上、環境への負荷軽減を果していないものは初期段階で必要ない(ダメなものはダメ)とお客にでもはっきり提言できる会社にしたいと思います。部署によってお客に対する接し方はいろいろあると思いますが、私が所属している部署では常にこのことを念頭に仕事に取り組んでいきたいです。 |
● | 実際に豊島に行っての感想は、豊島は非常に美しく、ゆったりとした雰囲気であると感じました。それだけに本当にこの島で不法投棄という事件が起きた事が信じられない思いです。また、処理現場は思ったよりも異臭等はせず、見た感じでは処理は確実に進んでいると思いましたが、処理完了後の処理現場の活用方法が決まっていない事や、農産物等の風評被害など今後の課題は多数あり、豊島問題の本当の意味での解決まではまだまだ道のりは長く、険しいと感じました。 |
● | 人間が出したゴミで苦しむ人と、そのゴミを処理することで生活を営む人がいるのが何とも皮肉な感じでした。 |
● | 豊島の不法投棄現場も有害物の拡散を防ぐための防止処置が重装備でなされており、また、直島での処理施設の豪華さ見て、そこまでの設備が必要であるかという疑問を持ったが、一企業の悪行により島民が持った不信感を払拭するためには致し方ないのかという感想を持ちました。ただ、不法投棄に対する行政への不信感の他に、ごみや産業廃棄物を安全に処理するための技術に対しても不信感を島民はもたれており、我々としてもごみ処理施設が住民の皆様から認められるよう努力を継続していく必要があると感じた。 また、つい施設の豪華さに目が行ってしまったが、この豪華な施設の建設費用と処理費用で合計500億円近い血税が投入されることを思うと、一部の業者の悪行を国民が尻拭いする現状のシステムは絶対変えるべきであると思います。 |
「ただ豊島の子どもたちの未来のために」と語る住民会議、前川さん |
● | 今回の見学で訪れた豊島では、「豊かな自然を後世に残そう」とがんばってこられました。その考えには大いに共感でき、私がこの仕事を選んだ理由の一つでもあります。「そのために何が必要か」常に考える姿勢を忘れないでいきたいと思います。これ! という解決策はないと思います。長い目でこつこつといまの立場で最善を尽くすことで、道が開けるものと思っています。 |
● | 正直に言うと、豊島と直島の町をみてすごい差を感じました。差とは、勝手な思い違いかもしれませんが、町の雰囲気が違ったように感じた。豊島は県の被害者の町で雰囲気的にすごく寂しく感じた。それに比べ、直島は豊島に比べ多少活気がある町に感じた。島の人も言っていたが、県は被害が発生している町には風評被害による補助金などは一切支払わず、まだ発生していない直島の風評被害の保証金を払っていることにすごく疑問を感じる。これが楯突いた町と県に手を差し伸べた町の差であるのかは分かりませんが、これからも豊島は県から突き放された状態になるのか心配です。 |
● | 考えていた以上に50万トンのゴミは多量であり、不法投棄を行ってきた業者はもちろん、これらの不法投棄を堂々と見過ごしてきた行政に対して強い反感を覚える。中間処理施設を受け入れた直島と受け入れなかった豊島とでは、県の対応も違うとのことであったが、先に立って指導していく立場の行政がこのような状態であると、今後も(既に起きているが)、各地で同様の問題が起こると思わざるを得ない。 |
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見学を終えたビジョンづくり委員会メンバーの感想は、一市民としての不法投棄に対する憤りだけではなく、「環境プラントメーカー」で働く一人としての目線から使命感にもとづく決意のような声も多く聴かれました。ここでそのいくつかを紹介したいと思います。 |
● | 豊島、直島にある処理施設は非常に立派で、輸送船も周辺環境に配慮されたものでした。しかし、香川県は「環境に配慮した施設」を県内外にアピールしたいのか、必要以上に立派すぎ豊島住民の戦いからは乖離した非常に違和感のあるものでした。「循環型社会」というキーワードは、環境装置を売っていくときの売り文句の一つです。が、その資源再生装置(少なくとも汚泥焼却)自体が化石燃料を使用し、電気、水を使っています。膨大なコストをかけてできたものが、路盤材に使う石やセメント原料ではあまりにお粗末な気がします。エコタウン事業は立派だし、リサイクル事業の保護も立派ですが、同時に月並みですが廃棄物がでないような法整備等考えなければいけないことは自明です。我々は廃棄物を処理する装置を売っているメーカです。ごみがどんどんでて、汚水排水がどんどんでて、法規制が強化されればおそらく会社は儲かりますが、それでは「循環型社会」の構築はできません。「モノ」が廃棄物になる前の段階から、一連のサイクルで考えなければならない問題だと思います。「資本主義」「金儲け」と「環境問題」は相反しないというのが「ビジョンづくり委員会」のテーマの一つでした。それぞれの立場もあり、【答え】なんてものはないのでしょうが、これからも考えていきたいと思います。 |
● | 環境装置メーカーの従業員にとって環境を通じて社会に貢献する、即ち「循環型社会の構築」は非常に重要な取り組みであり、積極的に参画していかなければいけない社会形成の場であります。しかしながら循環型社会を構築していくがあまり盲点になっていることがあります。その理由は、廃棄物の量を確保しなければ施設の稼働率が上がらないということです。皮肉にも稼働率を上げるための行動を行うということは、本来「循環型社会の構築」する上で優先事項である「廃棄物を発生させない」という考えに相反しています。生産された廃棄物を持ち込まなくては直島のエコタウン事業は経済的に成立せず、直島の住民は潤いません。私個人的には、出すより出さない努力、即ち廃棄物を発生させないことを進めるような努力をしていきたいと思います。 |
● | 大量に発生する廃棄物を資源として循環させるためには中間処理は必要不可欠であると思います。ただ、この中間処理に対する住民の皆様の不信感はかなりあります。この不信感を払拭するためにも環境装置メーカーの従業員である我々としては、トラブルがなく安全で環境負荷をかけない装置を提供できるよう努めなければならないと思います。今回の豊島では、施設の操業状態を情報公開することにより不信感を取り払うようにしているが、我々が保有している技術もこの情報公開に耐えられるような技術にしていかなければならないと思います。また、装置以外でも、循環型社会の構築の手助けとなるようなビジネスの創出や提供といったソリューション活動も活発にしていく必要があるのではないかとも思います。 |
● | 一市民としては、一番簡単な分別ゴミをすることであるが、一装置メーカーとしては、自治体などによって分別されたゴミをどれだけ低コストでリサイクルできるかを考えていかなければならない。分別されたゴミも大金を掛けて処理しているようでは、不法投棄が発生することは目に見えている。従って装置メーカーは、より低コストで容易に処理できる機器を開発する必要があると考えます。 |
● | このような問題を二度と起こさない様に意識を高く持つことは勿論ですが、環境メーカーとして、現在の社会でどんな環境リスクがあるか把握し、それを技術的に解決できるようにしなければいけないと思います。統合によりリスク回避、管理ができる商品メニューは揃っているのではないでしょうか? |
● | 昨今の企業がらみの事件、不祥事を見るにつけ、いかに情報開示が大切であることを感じています。適正な時期、方法を持って情報開示を行うことが企業の努めだと考えます。 |
かつては野菜を洗ったり水遊びをしたり地域の人たちの憩いの場であった唐櫃の清水 |
● | 資源のない日本は、資源を大量に輸入して、加工して輸出するという構造のなかで、急速に経済発展を遂げました。しかしお金はたまっても、人の体で例えれば、食べ過ぎで肥満状態といえるのではないでしょうか。たくさん食べれば、たくさん排泄物も出ます。太れば大きな服も必要です。食べすぎを改めダイエットしないと、循環型社会はみせかけで終わってしまう気がします。PETやプラのリサイクルも、大金をかけてリサイクルしています。おかしいと思う感覚を多くの人が身につける必要があると思います。 |
● | 環境装置メーカーの従業員としての立場でできることには限界があると思います。上部団体である業界団体や、研究者、国、NGOなどともっと話し合う機会をもち、ベクトルをあわせていくことが最優先だと思います。 |
● | 豊島のような不法投棄問題が起こらぬよう、まずは発生するゴミの量を減らしていく事がもっとも大事な事だと思います。そのためには、ゴミが極力でないような社会へと少しずつ変わっていくように、グリーン購入やゴミの分別の徹底など身近な事を一人一人が行っていく事が必要であると思います。また、環境装置メーカーの従業員としては、まずはゴミの問題等の環境問題について知りえた情報を周りの人々にも伝え、問題についてより真剣に向き合う社会へと結びつけていきたいと思っています。 |
● | 現場を案内していただいたすべての方々にまず感謝を申し上げます。環境に関する問題は机上で議論するのも大切ですが、現場で感じたことをもって行動に移すことが一番重要であると思います。今回、本見学に参加したことにより、さらに廃棄物問題に対する認識を深め、環境保護に一歩でも手助けできる仕事を行っていきたいと考えます。 |
● | 豊島・直島の処分施設を見た正直な感想はものものしい施設だと感じました。(ゴミの処分場という事で、周りの目を気にした過剰にクリーンな設備になっていると思いました。)今回の豊島の問題でも、莫大な費用がかかるということが、解決への道のりが遅くなった一因だと言えると思います。立派な設備は、環境問題への意気込みの象徴としては大きな意味を持つと思いますが、日本全国で様々なゴミ問題を抱える現状を考えると、今後はもっと実利的な施設を作っていく態勢へと変換する必要があると感じます。 |
● | 最近の猛暑でエアコンがバカ売れする一方で、エアコンの冷えすぎ防止のために毛糸のパンツが売れているそうです。人間は皆一様ではなく、環境への関心も違います。そんな人たちを一度に環境問題へと振り向かせることは現実的には無理だと思います。しかし我々のビジネスは間違いなく環境問題に貢献しています。それにしては、地味な企業であると感じます。環境社会の縁の下の力持ちで終わっては何となく勿体ない気がします。もっと前に出て行くべきだと思います。ヤンキースの松井然り、ダイエット食品然り、注目されることで、初めて関心が高まる気がします。環境に対し我々が抱える大きな問題と、問題を解決し、環境へ貢献している我々のビジネスをもっと広く知ってもらうことで、環境問題への関心が高まるのでは、そうなれば良いなと思います。 |
● | 香川県の不法投棄で苦しんでいる豊島と、不法投棄廃棄物を受入れる直島との対応の差が露骨である中で、不法投棄現場を元通りに戻そうとの首尾一貫した理念の元に活動されている豊島住民の皆様には頭が下がる思いです。高齢化や風評被害等があるが、今後とも運動を続けて欲しいと思います。 また、不法投棄現場近くの海岸は死の海であったが、拡散防止対策を施した後は2年もしないうちに海岸が元に戻りつつあるとの話を聞いて、自然の持つ力は偉大であることを改めて思いました。この自然を守るためにも、環境装置メーカーの従業員として環境のキーワードを常に意識しながら業務を遂行していきたいと思います。 |
● | 人間の欲望を満たしつつ、循環型社会を実現することは困難の極みであると痛感する。その中で自らの製品を1品でも多く、1カ所でも多く納めることが、今できる限りの我々の使命だと思う。 |
● | リサイクルするためには、(リサイクル品を購入する場合も、破棄する場合も)多額の費用がかかるが、これらの費用を極力ケチらない。特に破棄する場合、ケチることによって、豊島問題のように不法投棄が行われ、最終的に税金などによって、元々必要であった以上に費用がかかり、環境への影響も多大なものとなる。 |
おわりに |
都市部から排出された産業廃棄物の不法投棄により、自然豊かな豊島が瀕死の被害を受けた今回の事件。シートで覆われた投棄現場を視察しただけでは当時の状況を図り知ることはできませんが、案内をしてくれた多田さん、そして住民会議の前川さんの思いを聴いて、事件の重大さとあまりにも大きな代償を伴った教訓としての重さを感じ取ることができました。 豊島事件が解決した後も、全国で産業廃棄物の不法投棄は後を絶ちません。「不法投棄」という悪質な犯罪が、都市部の豊かさのつけとして目の届きにくい地方で発生しているという現実から眼をさけてはいけません。さらにもう一歩踏み込んでゴミを大量に発生させる仕組みを変えていくことに知恵とお金を投入すべきなのかも知れません。本当の「持続可能な循環型社会」の創出のために「環境ソリューション」を社名に冠した企業で働く私たちは今何をすべきなのでしょうか。 次回第5ステージでは、最近の気候変動の原因であるといわれる地球温暖化をテーマとして、その防止のために企業はどう考え何をすべきかについてディスカッションをする予定です。あまりのテーマの大きさにどのような答えがビジョンとしてとりまとめられるのかは、私自身にも未だに描き切れていませんが、私たちのユニオンが「考働する集団」であることを理念として掲げていることを忘れずに取り組んでいきたいと決意しています。
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