「本は世界を視る窓」
素晴らしい交流に心から感謝します
  在ウランバートル・マルチン郡地域評議会
S.デムベレル


 私の故郷オブス県マルチン郡はモンゴルの西端に位置し、ウランバートル市から遠く離れた田舎にある村です。中心地から遠く離れているため内外のお客様が訪れることも希です。しかしながら、訪れた誰もが心奪われるような湖、砂漠、大草原や山脈のある美しく恵まれた土地です。
 当郡の住民の多くは家畜を飼って、一年中移動しながら生活している遊牧民です。マルチンというのはモンゴル語で「遊牧民」という意味です。
 この地方で生まれ育ち、進学のため故郷を離れ、その後ウランバートル市で就職し定住している数名の有志が、自分の故郷の発展の貢献のために、約10年前、地域評議会を作りました。私は日本大使館に勤務しながら当会幹部として、自分の故郷のため力のかぎりを尽くしたいと頑張ってまいりました。 
 モンゴル国は1990年代の初めに民主化・市場経済へ移行しはじめたばかりの発展途上国です。モンゴル国の新しい国づくりに世界の国々、とりわけ日本国政府・国民が積極的に支援協力をして下さっていることを我が国民は良く理解し、感謝しております。
 モンゴル国の人口は僅か240万人ですが国土は広大です。そのため、海外からの支援と交流の多くはモンゴルの中心地に集中し、私の故郷のような中心を外れた地域には交流の手が何も届かないということが多く見受けられます。その最大の理由は、遠隔地との交流には時間と費用の面で問題が生じることが関係していると思われます。
 2002年10月、モンゴル・但東シルクロード友好協会の使節団が兵庫県出石郡但東町を訪問した際、日本モンゴル民族博物館の金津館長のご紹介により関谷執行委員長はじめとする組合の皆様と、私は出会うことができました。この幸運を、神に感謝します。
 神鋼環境ソリューション労働組合の皆様がこれらの事情を深く理解し、我が郡との長期にわたる交流について決定されたことに対し、当郡の人々は非常に喜び、在ウランバートル・マルチン郡評議会も大歓迎しております。
 本は世界を視る窓であり、人間の能力を向上させるための計り知れない価値を秘めています。我が故郷は中央から遠く離れていることから、残念ながら情報も不足しており、届けられる本の数も非常に少ないのです。恥ずかしながら申し上げますと、正直なところ、本があっても購入する余裕のある村民も少ないのです。この事情を組合の皆様がご理解下さり、昨年、モンゴル語で書かれた多数の書籍を寄与下さいましたが、現地での贈呈式がSARSの影響で中止になってしまいました。しかし本年6月、神鋼環境ソリューション労働組合の井上事務局長を団長とした6名の方々が現地を訪れ、子供たちや教職員への図書にあわせて楽器、スポーツ用品などを再び贈呈下さった上、学校の教員、生徒及び村民と楽しく交流して下さいました。電気も無い、道も舗装されていない、時代遅れの地域に、遠く離れた海の国である神戸市の神鋼環境ソリューション労働組合の代表の使節団の方々が、心を込めて訪問し、すばらしい交流をして下さったことに対し、当地方の皆は非常に喜び、皆様が今後繰り返しご訪問下さることを心待ちにしております。
 この交流を、息の長い実のあるものとして、絶対に成功させたいと思っております。モンゴル日本両国民の相互理解が更に深まり、神鋼環境ソリューション労働組合とモンゴル国オブス県マルチン郡の共同協力が一層繁栄することを祈ってやみません。