タテ軸とヨコ軸の総合力が
「人財育成」の原動力に
執行委員長 関 谷 久 之


第1期委員会での議論が
新ユニオンの理念づくりに

 第2期ビジョンづくり委員会のスタートにあたり主催者を代表して一言ご挨拶をさせて頂きます。このビジョンづくり委員会は、一昨年の定期総会で運動の基調として確認された、「一人ひとりが『10年後、20年後の自分』への道のりを視野に入れたビジョンを描き、それぞれの立場で働きがいのある職場・企業風土を構築しよう」にもとづき設置されたものです。その当時は公共事業の縮減や民間設備投資の低迷などの影響を受け業績は著しく悪化し、それに伴う緊急諸対策や要員調整、さらには一時金水準の大幅引き下げなど、働くものにとって厳しい対応が続き、将来の展望も極めて描きにくい状況にあったと言えます。
 このような閉塞状況にある中、若手を中心に「一人ひとりが10年後のビジョン、あるべき姿について、考え語り合う場をユニオンとして設けてみようではないか。」ということからこのビジョンづくり委員会はスタートしました。第1期ビジョンづくり委員会の開催経過については、すでに要録集などで紹介させて頂きましたので、詳しくは省略しますが、お好み焼きチェーン店「千房」の中井正嗣社長や、男性化粧品のトップメーカーである(株)マンダムの桃田雅好常務など、多彩な講師やアドバイザーのご協力を得て、いろんな角度から「ビジョンとは何か」についてディスカッションすることが出来ました。
 また、この委員会をスタートさせた直後には、神鋼パンテツクと神戸製鋼環境部門との統合が発表され、この委員会での議論が新ユニオンの理念のキーワードである「考働する集団」を生み出すことにもなり、結果的には実にタイムリーな企画となりました。

「自分自身にとっての
『環境ソリューション』」を
第2期のテーマに

 新しいメンバーにより設置された第2期ビジョンづくり委員会では、すでにみなさんへは企画書として配布していますが、新ユニオンの理念として掲げた「循環型社会の創出に貢献する企業で働くことに誇りを持ち一人ひとりがビジョンを描く」を真っ正面に見据えて、環境浄化にとりくむ企業で働く一員としての立場、そして持続可能な社会づくりにとりくむ地球市民としての立場の両面から「環境」の10年後をテーマとしたディスカッションを行い、自分自身にとっての「環境ソリューション」について考えていきたいと思います。
 第1ステージから第6ステージまで、企業、行政、ユーザーなど様々な立場の講師を招きながら、幅広く「環境」について考え、存分に語り合って頂きたいと思います。

第2期ビジョンづくり委員会の予定
 
第1ステージ  2月28日(土)および3月13日(土)
「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)における
 『環境』の位置づけについて」
  企業の環境活動として先進的な取り組みをされている島津製作所の事例を学び、企業の社会的責任における「環境」の位置づけについて考える。
     講師…株式会社島津製作所 環境・安全推進室長 理事 大 瀬 潤 三 氏
 
第2ステージ  4月24日(土)
「神戸製鋼グループの環境経営について」
  親会社である神戸製鋼における環境経営の事例と、グループ全体として環境経営とりくむ重要性について考える。
     講師…株式会社神戸製鋼所 環境エネルギー部長 宮 川   裕 氏
 
第3ステージ 5月15日(土)
「当社における環境ビジネスの昨日、今日、明日、」
  当社の環境分野でのビジネスの変遷を学び、「これから」の展開と環境ソリューションについて考える。
     講師…株式会社神鋼環境ソリューション 技術開発本部
            プロセス技術開発部長 和 田 耕 一 氏
 
第4ステージ 7月3日(土)〜4日(日)予定
「環境問題の現場を視て考えよう」…遠足
  香川県豊島、直島の産廃不法投棄の実態とその後を 現地視察を含めて学習する。

第5ステージ 8月28日(土)
「環境関連法規の今後と行政のとりくみについて」
  講師…ひょうご環境創造協会 副理事長 小 林 悦 夫 氏


第6ステージ 10月23日(土)予定
「ゼロエミッションに向けたユーザーのとりくみについて」
  当社ユーザーの中で、ゼロエミッションに積極的なとりくみを 行っている事例について勉強する。
     講師…未定

「会社」と「ユニオン」の
タテ軸・ヨコ軸の三つの関係

 「青年を大切に育てない組織の将来はない」。これはあらゆる組織・集団に対する至言であると思います。最近、「なぜ労働組合がそこまで『教育』に取り組むのか?」という疑問を投げかけられることがあります。確かに私たちのユニオンはこのビジョンづくり委員会もそうですし、ユニオンオープンハウスと名付けた世代別のセミナーも活発に開催しています。しかし、これは「教育」を目的として開催しているのではありません。少なくともオープンハウスは、職場、事業所を越えて同世代の会員が気軽に集まる「場」の提供として開催していますし、ビジョンづくり委員会は、とくに若手の役員を対象としてお互いを知りビジョンを語り合うことを目的としています。あくまでもきっかけ作りが目的で、研修成果を問うものではありません。
図ー1
図ー1
 私は「人を育てる」ということについて図−1のような整理をしています。会社はタテ軸の「教育」、ユニオンはヨコ軸の「共育」です。会社は、業務を通じたOJTと体系だったプログラムで社員を教え育てる。ユニオンは、人と人のつながりを重視し、共に育つ動機付けを行う。人を「財」として捉える視点でタテ軸とヨコ軸の総合力を発揮していくことが、企業にとってもっとも大切な人財育成に直結していくのではないでしょうか。
図ー2
図ー2
 2番目のタテ軸とヨコ軸の関係は図−2のように、「企業の社会的責任」という点についてです。ここ最近、食の安全が脅かされる話や工場などの爆発、火災などについてのニュースをよくご覧になると思います。安全や品質に対するトラブルはことと次第によればその企業の命取りになることもあります。またトラブル防止という観点から一歩踏み込んで、積極的に「企業の社会的責任」にとりくむ姿勢そのものが企業の評価基準にもなっています。企業の持続的な存続のためには、単に「製品を生産し販売する」ということだけではなく、生産段階のみならず納入後もずっと自社の製品に対する責任が生じますし、その一方で社会における企業としての「信頼」という側面も重要視されています。ユニオンのヨコ軸がずっと伸びたところに「社会」との一つの接点があり、その会社で働く「人」の集団として、企業内NPOのような位置づけで社会の信頼を得る活動を行うことも出来るのではないのかと考えます。
図ー3
図ー3
 3番目のタテ軸とヨコ軸は、「公平」と「平等」についてです。「働く」ということに対する価値観は様々であり、そのことにより処遇差が生じることは当然であるといえます。しかし、処遇差はあくまでも「業績」に対する評価によるものであり、ユニオンはどこまでも一人ひとりの「人」を大切にする組織として「平等」を原則に。会社は「公平」を原則に人を処遇し制度の運用を行う。労使双方が一人ひとりの「人」を「財」として尊重し合う中に、人と人が共鳴し合う真に強い集団が生まれると考えています。
 この3つのタテ軸とヨコ軸の絶妙のバランスと、45度に伸びる線の太さと長さが「企業」としての総合力になるのではないのでしょうか。
 このビジョンづくり委員会で考え語り合ったことは、委員会のメンバーだけの財産に止まることなく、時間はかかるかも知れませんが、小さな波動がいつしか大きなうねりとなって、全体の45度線を太く長くしていくと確信しています。

雄弁は人をいっそう勇敢にし、
勇気は人をいっそう雄弁にする

 第2期ビジョンづくり委員会の今後の予定については、先ほどお話ししましたが、まずは顔と名前を覚えあって下さい。恐らくまだ顔と名前が一致しない人がそれぞれ何名かはいるのではと思います。東京支社の人も播磨製作所の人も、大阪支社の人も九州支社の人も、そして元パンテツクの人も、元神戸製鋼の人も、みんな同世代の仲間です。胸襟を開いて大いに語り合って下さい。「雄弁は人をいっそう勇敢にし、勇気は人をいっそう雄弁にする」、これはドイツの作家の言葉です。これからの1年間でみなさんがお互いに友だちになり10年後を目指して力強くスタートされることを期待して挨拶とさせて頂きます。

ビジョンづくり委員会風景1 ビジョンづくり委員会風景2