企業の社会的責任 (CSR:Corporate Social Responsibility) における「環境」の位置 づけについて |
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株式会社島津製作所 環境・安全推進室長 理事 大 瀬 潤 三 |
はじめに |
皆さんこんにちは。この中で第2期ビジョンづくり委員の皆さんには2月28日に当社までお越しいただき有り難うございました。本日は、先日お話しました当社の環境活動の内容からさらに一歩踏み込んで、「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)における『環境』の位置づけ」について詳しく説明したいと思います。本日の講演をきっかけに、皆さん一人ひとりが「環境」のことをもっと深く知って、また、「環境」に精通していくことで環境ビジネスを伸ばしていかれることを期待しています。 ところで、当社では2年前に環境ソリューション事業推進室を設置して環境分野を伸ばしていこうとしているのですが、主力である環境計測器だけではなかなか思うようにはいきません。従来の枠を越えて新規事業へ一歩踏み出すことは非常に難しいことです。これまでの環境ビジネスは規制の追い風に乗って伸びてきましたが、本来、環境問題は規制の有無に関係なく恒常的に取り組む必要があります。皆さんも絶えず「環境」のことを頭に入れておいて、自社製品で解決できないかを考えてみてください。もし自社で技術が足りなければ他社と連携することも視野に入れてください。 ビジョンづくり委員の皆さんに書いていただいた事前アンケートを拝読しましたが、皆さんの環境に対する関心の高さに驚きました。環境問題は自分たちだけでなく、子供や孫たちにも関わる重要な問題です。これからは今まで以上に環境保全に関心を抱いて、ビジネスに直接関係がなくても環境と向き合って活動展開してほしいと思います。社会的活動まで含めて一歩踏み出して行動するのは難しいことですが、労働組合だからこそ、それができるのだと思います。後ほど詳しく説明しますが、地域との連携など労働組合の本来機能を十分発揮して、積極的な環境活動をしていただくことを願っています。 |
環境問題の状況 |
人口増加と地球環境の破壊 そもそも環境問題は人間が引き起こしたものですから、我々人間が解決していかなければなりません。皆さんもご存知のとおり、京都では腐敗した卵の販売や鳥インフルエンザの問題で世間を騒がせていますが、鳥や卵には責任がないわけです。鳥インフルエンザは確かに地球の温暖化が原因の1つであるかもしれませんが、2次災害を引き起こしたのは間違いなく人間です。だから、これらの問題についても人間が解決するしか手はないのです。 産業革命以降の科学技術の発展と医療技術の進歩による先進国の人口増加により地球環境が破壊されているといっても過言ではありません。バブルの崩壊は、人間に少し立ち止まって周囲を冷静に眺める時間を与えてくれたのだと思います。これほどまで地球そのものの健康が人間の手で害されていることをようやく世界中が理解したということです。 では、いくつかの環境問題を取りあげて説明していきます。 |
(1)地球の温暖化 皆さんもご存知のとおり、地球の温暖化が進んでいます。1997年に開催された京都会議(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)、いわゆるCOP3において、日本はCO2の排出量を1990年比で2008〜2010年に6%低減する約束をしました。しかし、2001年現在の排出実績を見ますと、産業部門で−5.1%、民生部門で+25.3%、運輸部門で+5.2%となっていまして、このままではCOP3での目標達成は難しい状況になっています。唯一、産業部門で減少していますが、これは生産拠点の海外進出や景気低迷による生産量の減少の影響を受けたためで、中小企業では対策がとられていないのが実態です。一方、民生・運輸部門では減少するどころか増加しています。特に民生部門、つまり一般家庭ではエネルギーを多量に使う生活に慣れてしまった結果だといえます。市民の意識改革が今後の課題であるといえます。 |
(2)有害化学物質の規制 今、最も注目しなくてはならない環境問題は、ダイオキシン・環境ホルモンに代表される有害化学物質だと思います。人間は自然社会に存在する物質に加え、数十万もの化学物質を生み出して、米国のデータベースChemical Abstractsにはこれらを合わせて4000万種以上の化学物質が登録されています。今までにこれらの化学物質は人間によって有益なものを目指して創造されてきましたが、残念ながら有害性、毒性など人命、生態系を脅かす要因についての検証はまだ始まったばかりです。 有害化学物質問題への対応として出されたいわゆるPRTR法は、有害化学物質の環境への排出並びに移動量をつかみ、その削減をはかることで環境汚染防止と人体への悪影響を排除するために施行されたものです。企業においては対象物質以外でも多くの化学物質が使われており、その管理強化が環境リスク回避の点から重要になってきます。 ここへ来てヨーロッパ(EU)の規制によって、日本が新たな対応を迫られる可能性がでてきました。特に、「特定物質の使用禁止指令」では鉛、水銀、六価クロム、カドミウム、臭素系難燃剤2種の6種類の化学物質が人体、環境に著しい影響を及ぼすとして2006年7月より上市される電気・電子機器にはこれらが含まれないことを保証しなければなりません。オランダでの日本メーカーのゲーム機のリコールは、微量のカドミウム含有がオランダ国内法に抵触するとされたもので、日本国内ではカドミウムは添加剤、着色剤として微量とはいえ広範に利用されています。これは単に1企業で対応できるものではなく、日本全体での代替物質、不使用の方法等々、国をあげて取り組まなければならない問題だと思います。 |
(3)最終処分場の逼迫 廃棄物最終処分場については平成11年以降で建設数が激減しています。これは有害物質が社会問題になってから、処分場建設に対して住民が総論(建設そのもの)は賛成するが、各論(自分の家の近くでの建設)は反対するようになったためです。住民は、ゴミ問題は国や行政が何とかしてくれると考えているようですが、このような他人任せでは何も始まりません。京都府に木津町という新興住宅街がありますが、この地域で処分場建設の話がありました。これに対して住民が猛反対しましたが、ここの住民はただ反対するだけでなく、自分たちの手で排出するゴミの量を減らし、分別を徹底してリサイクルを推進しました。その結果、処分場が不要になったということです。この例のように、皆さんも固定観念にとらわれることなく、新しい発想で仕事に取り組んでいただきたいと思います。必ず新しいビジネスチャンスが生まれるはずです。 |
(4)土壌・地下水の汚染 有機塩素系化学物質の汚染サイトは全国で40数万箇所と言われていますが、従業員500人以上の大規模事業所では約1500箇所となっています。大規模事業所を除く大半が調査・浄化未実施の状態となっています。有機塩素系化学物質の汚染サイトに加えて、重金属や油汚染サイトも相当数あり、今後、間違いなくビジネスチャンスになると考えられます。 (5)水の汚染 皆さんご存知だと思いますが、昨年の3月に、大阪、京都、滋賀で第3回世界水フォーラムが開催されました。21世紀は水の世紀といわれていますが、外国人に比べて日本人は「水」に対して関心が薄いと言わざるを得ません。関西でフォーラムを開催しましたので関西では多少関心があったようですが、東京ではあまり関心がなかったようです。今のところ日本では量、質とも深刻な問題になっていませんが、潜在的な問題を抱えています。神鋼環境ソリューションさんは水処理を専門としていますので、まだまだビジネスチャンスはあるはずです。 水の問題は量と質の2つに分けることができます。まず量の問題ですが、世界中で絶対的な水不足に直面している国は2000年現在、31ヶ国あります。日本における水の年間使用量は900億トンと言われていますが、これは輸入食品などの生産ために海外で使用される水の量が含まれていないことに留意する必要があります。例えば、穀物の輸入量は年間3,000万トンですが、これは300億トンの水の輸入に匹敵します(1トンの穀物生産に1,000トンの水が必要)。これは日本の水使用量の約1/3に相当します。このように世界的な視野で考えたとき、水不足は決して他人事ではないのです。 一方、質の問題ですが、世界では総人口の約1/3に当たる14億人が安全な水を飲めないといわれています。今のところ日本では大きな問題になっていませんが、昨年、水道水基準が改正になり、微量汚染物質の項目追加が行われました。農薬、化学肥料、工業排水等の水道水源への混入の可能性は十分あります。東北のある地方では、融雪剤に含まれる尿素(窒素)が河川に流入し、魚が住みつかなくなったということです。日本でも水の質の問題は今後クローズアップされてくると思います。 |
(6)金属の枯渇 化石燃料をはじめとする天然資源が底をついてきているということはオイルショックで十分認識されていますが、産業を支える金属のうち、銅、鉛、亜鉛などはすでに含有量の豊富な鉱山が取り尽くされていて、これらの金属はあと数十年以内に鉱山業が成り立たず市場に出なくなるというデータもあります。これからは如何に循環利用していくかが鍵になります。 |
環境修復の動きと ISO―14001・KES |
地球環境の修復の動きとして、まず、国内外での規制強化が挙げられます。また、国際的な取り決めとして、1992年にリオデジャネイロの地球サミットで採択されたアジェンダ21の宣言が挙げられます。この宣言は、経済の持続的発展と環境保全の実現および環境の世界標準策定が大きな柱で、人類に等しく経済発展と環境保全の同時実現を行うために英知が結集されています。さらに、環境に関する世界共通の標準をつくり、この標準が要求する事項を満足した主体に認証を与える仕組み作りが進められました。この環境の世界標準がISO−14001環境マネジメントシステムです。1996年9月にISO−14001は策定、それを受けて日本では、同年10月にJIS化しています。日本ではすでに約14,000社が認証取得しています。 確かにISO−14001は環境負荷低減のツールとしては有効ですが、本格的な環境活動を展開するとなると人手と費用が必要であり、中小零細企業で環境活動を展開しにくい実情があります。そこで、京都のNPO「京のアジェンダ21フォーラム」が京都簡易型ISOであるKES(Kyoto Environmental Standard)を策定して2001年5月にスタートしました。2003年12月現在、企業、自治体など278社が認証取得しています。 |
環境経営の変遷 |
1960年代後半に起こった公害問題を引き金にして企業はそれに伴う法規制強化に対して法遵守を目的とした環境保全の専門組織を形成して活動を展開してきました。1980年代後半には、地球環境関連法が成立し、企業は環境問題を企業リスクとしてとらえるようになりました。企業リスク回避のために予防的措置や自主的対策がとられるようになりましたが、どちらかというと受身的な対応となっていました。1990年代後半になると循環型社会形成に関する法規制が施行されました。このころから、企業は環境への取り組みこそが企業競争力、ビジネス開拓につながると自覚し、積極的に対応し始めたのです。例えば、トヨタ、リコー、キヤノンなどは「環境」を単なるPRではなく、全面的に前に押し出して、商品の差別化に利用しています。環境で先進的な企業は一様に環境を実質的に経営に取り組んで大きな成果をあげています。このことは将来のあるべき経営の姿を暗示させているといえます。 公害問題に始まり広域の環境問題が露呈し、このことこそ日本経済の発展に伴ってのつけが環境破壊につながっているとの共通認識を持つようになりました。経済発展に伴って確かに国民は豊かな生活を送れるようになりましたが、人間の生きる基盤である地球環境が次の世代まで安寧である保証はなく、経済発展と環境保全の同時実現が我々に課せられた最大の課題であるといえます。その意味でも「環境」は企業の社会的責任遂行の大きな側面であるといえます。 |
「環境」における企業の 社会的責任 |
ビジョンづくり委員の皆さんのアンケートの中で、「人間の活動そのものが環境に悪い影響を与える」と書いている方がおられました。そのとおりだと思いますが、企業の活動そのものも環境に悪影響を与えていると言えます。ですから、企業の環境活動は責務と考えて取り組む必要があります。「環境」における企業の社会的責任についてはいろいろな形があると思いますが、ここでは3点取り上げて説明します。 |
(1)環境負荷低減・技術開発 事業活動に伴う環境負荷を低減したり、本業の技術開発で地球環境の保全に貢献するというのは企業の責務だと思います。これらの企業活動により環境破壊をストップさせ、広範な環境保全を実現できると考えています。 (2)リーダーシップ 環境問題は企業での取り組みが盛んですが、先ほども話しましたように、大手企業は環境を経営の最重要課題の1つとして捉えて環境保全活動を推進しています。しかしながら経済のピラミッド構造は依然かわっておらず、環境保全活動に取り組むには人手も費用もかかるので、中小・零細企業ではほとんど手がつけられていないのが現状です。環境で先行的な大手企業は自社の環境負荷低減とともにこれらの企業に対して環境保全でリーダーシップをとる必要があると思います。 (3)連 携 (1)で説明しましたように、事業活動に伴う環境負荷を低減したり、本業の技術開発で地球環境の保全に貢献することはできます。さらに、環境活動そのものが進化していると考えて、もう一歩進めて外部環境支援を役割に含めて活動を展開すると新たな連携をベースに環境ソリューション事業が見えてきます。企業対企業、企業対行政、企業対市民などの連携を強めることで環境保全の裾野が拡大され、地域の活性化にもつながると思います。 |
当社の環境経営 |
当社の環境保全活動を進めるうえで社是、経営理念は羅針盤として実に有効に働いています。得てして社是、経営理念はお題目で終わり勝ちですが、当社では環境保全活動の推進のために社是、経営理念を如何に具現化するかが最終ゴールになっていて、全従業員の意思を統一できる利点があります。環境保全活動の根幹であるISO−14001にはいろいろなプログラムがあり、いずれもが社是「科学技術で社会に貢献する」と経営理念「『人と地球の健康への願い』を実現する」に結びついています。 みなさんの労働組合では昨年からビジョンづくり委員会を開催されて、組合のビジョンづくりをされているということですが、意思統一をするうえで大変有効な企画だと思います。「環境」を冠にした会社として、「環境」をキーワードとして組合と会社(経営)が共通のビジョンを持つことは大事なことだと思います。 |
当社の環境活動の取り組み |
当社の環境活動を概観しますとその内容は、環境への取り組み目的の変化に合わせて大きく変化していることが判ります。初期の主な活動は、ISO−14001認証取得を目的としたもので、省エネ、廃棄物削減、リサイクルを展開していました。最近では、経営効率化を目指してグリーン調達、環境配慮型製品の開発、化学物質の管理へと変化してきています。さらに、環境配慮型製品の開発件数といったものをISO−14001で言う、環境目的・目標に掲げ活動を推進し、P-D-C-A(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを回してシステムとして成果を上げるようにしています。 |
具体的な当社の環境活動は、(1) 事業活動に伴う環境負荷低減、(2) 技術開発で地球規模での環境保護貢献、(3)
外部環境活動の支援、の3本柱から成っています。これらのうち、どれが欠けても当社の環境の側面での社会的責任が果たせないことは言うまでもありません。 (1) 事業活動に伴う環境負荷低減 今まさに目に見える環境活動は自社のサイトの環境負荷低減のためのものが大半で、これを継続的に改善することの重要性はISO−14001の趣旨からしても明らかです。世の中の技術動向を注視しつつ、環境負荷の極小化を追い求めることは当然のことだと考えています。 (2) 技術開発で地球規模での環境保護貢献 当社は科学技術をもってそれを製品化することを生業としています。それらの製品には環境保全に寄与するものがいくつもあり、環境計測・分析機器が代表的です。これらのいわゆる環境ビジネスが主要事業の1つであることから、当社の環境活動はどこよりも先駆的であり、環境事業の伸長を環境活動の柱として特徴づけることが大切だと思います。また、活動の結果、簡易分析計の開発や環境配慮製品の創出などの課題が明らかになってきました。 (3) 外部環境活動支援 (1) 事業活動に伴う環境負荷低減、(2) 技術開発で地球規模での環境保護貢献、はいずれも内部環境活動で、環境に対する当社役割としてはさらに外部の活動を喚起するものも含めるべきと考えています。これは、内部の環境活動の良し悪しで勝ち負けを競ったり、過度の宣伝に利用しても地球規模あるいは日本全体からすれば環境保全の度合いが知れているからです。とくに、先駆的といわれ、あるいはそのことを自負する企業は培ったノウハウを外部へ普及し環境活動の輪を広げることこそ使命と考えるべきです。環境報告書や環境会計を発行する本来目的は、情報開示による企業責任の全うと、読み手が環境活動を理解することで活動を外部に波及させることにもあるはずです。当社は決して先頭を走っているわけではないですが、少なくとも環境活動の目的は社是、経営理念の具現化にあり、外部への啓発も大きな課題であると認識しています。 次に、具体的な取組みについて説明します。 |
外部環境活動支援の具体例 |
当社の行っている外部環境活動支援を整理して説明します。 |
(1) 技術支援 国連大学プロジェクト支援は3期目に入っています。日本を含む東アジア9カ国に分析機器貸与、各国の技術者に分析技術取得を行っています。また、JICAの研修生を定期的に受け入れています。環境修復のためにはまず環境汚染を測ることが必要であり、分析は不可欠なものです。経済成長期にある東アジアの環境保全のためには多くの分析エンジニアの育成が重要であり、育成のお手伝いをしています。 (2) 環境セミナー 顧客、工業会会員、市民、取引先、大学等を対象にして環境セミナーを開催しています。当初はISO−14001認証取得支援がメインテーマでしたが、ISO―14001認証取得サイトが14,000を超えた現在は、環境経営に関するもの、グリーン調達、EUの指令とその対応、地球環境問題と活動喚起等がテーマとなっています。 (3) 町づくりセミナー 町づくり、村づくりといった地域活性化のための環境セミナーに講師を派遣しています。地域は自然環境、史跡、特産品と言わば環境の宝庫であり、自然環境保護を進めながら環境の宝物で新たに地域経済圏を創出しています。 (4) 環境教育 ライフスタイルを変更して環境に配慮した生活をする、といっても豊かで便利な生活に慣れた大人にはライフスタイルを変更することは容易ではありません。今後は、小・中学校の環境教育が非常に重要になると考えて、定期的に教員を当社に受け入れて環境実習を行っています。さらに、小・中学校に出向いて環境出前講座も開催しています。また、女性のプロジェクトチーム「えーこクラブ」を結成して、従業員、市民、学校向けの環境教育資料を作成、配布して環境啓発・教育活動を推進しています。 (5) ISO―14001・KESの認証取得支援 ISO−14001やKESが環境にも経営にも有効なツールとの認識から、取引先、代理店を集めて定期的に認証取得のための勉強会を行っています。参加企業のうち、個別に希望する企業に対しては認証取得のための支援活動を行い、何社かはすでに認証を取得しています。 (6) 行政・工業会との関係 環境に関する新規条例、施策の検討には行政、学識者、市民、NGO・NPO、企業等広範なメンバーで行う必要があることから、これらの検討会に企業の立場で参画しています。また、環境関連の各種委員会や研究会にも参画し、工業会会員企業への環境活動支援も行っています。 (7) ベンチャー企業育成 大手企業による環境保全に関する技術進歩は目覚しいものがありますが、ベンチャー企業も計測、浄化で独自の技術開発を行っています。幾つかの地元ベンチャー企業との連携を深めることにより新たな環境ソリューションビジネスも見えてきました。当社が頭になって、その下でベンチャー企業が動くというビジネス形態は当社に信頼があってこそのものと実感しています。当社とベンチャー企業はWIN-WINの関係で連携でき、将来に明るいものが見えてきました。 |
外部環境活動支援の 副次的効果 |
社会的責任の遂行にはコストがかかりますが、当社の外部環境活動支援はコストを吸収して余りある副次効果を生んでいます。
(1)環境保全成果の拡大 |
労働組合の ビジョンづくりに向けて |
(1)本来機能での環境活動 |
(2)環境ソリューション事業 労働組合の環境活動から派生する仕事や会社の仕事にしても、真の顧客のニーズに応えるという意味で「環境ソリューション事業」ととらえて行動してほしいと思います。その際、3点ほど留意してほしいと思います。 1つ目は顧客のターゲットで、環境管理部門を攻めるのが重要なポイントになります。環境保全への投資は企業の責務になっていますので、購買部門を攻めるより仕事になる可能性が高くなります。2つ目は自社の保有技術を今一度整理することです。自社に不足している技術があれば、他社との協業も含めてビジネスを展開してほしいと思います。環境分野でビジネス展開するには「ブランド=信用」が最も重要になります。「神鋼」ブランドを最大限利用するのは言うまでもありませんが、時にはベンチャー企業の技術をうまく使うことも考えてください。3つ目は、人との接点を大事にするということです。先ほど説明しました外部支援や工業会等で知り合った人脈を大切にすることで、将来的に新しいビジネスが生まれると思います。 補足ですが、ビジョンづくり委員の皆さんのアンケートの中で、公共事業の売り上げが減少しているというのが目につきました。皆さんはPFI(Private Finance Initiative)という言葉を聞いたことがあると思いますが、是非、真剣に勉強してみてください。といいますのも、公共事業が減少しているのですが、PFIに名前を変えているだけかもしれないからです。実際にPFIは浄水場や廃棄物処理場で実現されてきています。PFIの一環として、中学校と複合施設の建設といった案件がありまして、当社は機器類と合わせて環境教育をメニューに入れて名乗りをあげています。この環境教育こそが環境マネジメントシステム発想の中学校への導入であり、環境教育で培ったノウハウがこのようなビジネスの場面でも生きようとしています。 (3)環境で際を埋める(ビジョンづくりに向けて) 先ほど皆さんに本来機能での環境活動をお願いしました。その際、是非頭に入れておいてほしいのは「際」を埋めるという発想です。本来機能での組合の環境活動は、会社にはできないことです。企業と企業、企業と市民、企業と学校などの「際」にビジネスチャンスが潜んでいるのです。当社でも一般管理部門である環境・安全推進室が企業と顧客の際を埋めて新しいビジネスを引き出しました。また、従業員が職掌の「際」を越えて潜在能力を発揮しました。特に若い人や女性の感性はすばらしいものがありますので、大切に伸ばしていってほしいと思います。 |
最後に、皆さんにお願いしたいことを一言でまとめますと、「本来機能を見つめて、際を埋めるという発想で環境活動を行う」ということです。労働組合の役割は組合員の雇用を守るということですが、そのために何をすべきかをもう一度考えてみてください。雇用を守るためにどうすれば良いのか?そのためには、仕事量を確保するしか手はないのです。組合が仕事をとってきてはいけないという法律はどこにもありません。組合の本来機能である広範な組織を利用した連携の中から新規事業を起こしてほしいと思います。固定観念にとらわれることなく、今いるところから外へ一歩踏み出していただき、このような崇高な目標に向かって活動されることを心から願っています。
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●大瀬潤三氏プロフィール 昭和44年3月 慶應義塾大学工学部管理工学科卒業 昭和44年4月 (株)島津製作所入社 科学計測第3工場工作課配属 平成4年 プロセス工場長 平成6年 環境計測事業部事業企画部長 平成8年 広報宣伝部長兼情報システム部長 平成10年 環境管理室長 平成12年 環境・安全推進室長 平成14年 環境ソリューション事業推進室長を兼任 |
島津エーコクラブが手作りで制作した「アースちゃんのエコライフ」は、ユニセフ(国連児童基金)を通じ全世界へ配布されています |
島津製作所 環境・安全推進室スタッフの皆さん |