20代から考える
マネープランについて





近畿労働金庫 神戸東支店 営業部門
近 藤 佑 樹

はじめに

 みなさんはじめまして、近畿労働金庫神戸東支店の近藤佑樹と申します。私は、1977年(昭和52年)7月30日生まれの25歳で、本日お集まりのみなさんとは同世代になります。私の場合、大学を卒業後、近畿労働金庫に就職し4年目です。こうした外回りの営業をするようになって3年目のまだまだ駆け出しですが、今日は同じ20代の仲間として「20代から考えるマネープラン」と題し、ライフイベントに備えたマネープランニングの必要性や各種金融商品の説明をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。
 先日、7月9日付けの神戸新聞夕刊の記事のなかに「パラオで柔道指南へ」という記事を拝見しました。みなさんも読まれたかと思いますが、この記事は、みなさんの先輩であるパンテツクユニオン執行委員の高野さんが、「パラオの警察官や刑務官に護身術として柔道を教えてほしい」という要請のもと青年海外協力隊員としてパラオ共和国に旅立つというものでした。これはなかなかできるものではなく、この記事を読んで、高野さんの「生きている間に精一杯の努力を」という人生観に非常に共感しました。私も何事にもその時々に一生懸命に挑戦していきたいと感じました。みなさんの職場に高野さんのような先輩がいることをお忘れなく、お互いに何事にもどんどん挑戦していきましょう。少し話はそれましたが本題に入りたいと思います。

ライフプランの必要性

 人生80年という言葉があるように現在の日本は世界でも有数の長寿国です。平成14年度では、男性の平均寿命が78.07歳、女性が84.93歳となっています。我々誰しもが自分の人生はゆとりがあり、そして豊かに暮らしていきたいと考えます。しかし現在の社会状況下では、以前のようにローンで車を買って、定年まで働いて、子供を進学させて…という当たり前の人生設計が立てにくくなってきています。
 その原因として、大企業も倒産するような「経済低成長期」。リストラ等により従来の終身雇用制度・年功序列型賃金制度が崩壊して一生涯の生活が保証されることがなくなりつつある「雇用・賃金の不安」。収入約40兆円・支出約80兆円と企業という視点でみると完全に倒産している国家財政によって運営される「社会保障制度の崩壊」。平成13年度18.0%、同22年度22.0%、同62年度32.3%(日本の将来推計人口より)とどんどん増加が予測される「総人口に65歳が占める割合」。また、1人の女性が一生涯に出産する子供の数がどんどん減ってきている現状からくる「少子高齢化」。今年4月より導入された社会保険料総報酬制導入にともなう「可処分所得の減少」といったことが考えられます。
 こうした現状から、年金・経済環境・ライフスタイルの変化に対応できるライフプランをたて、そして実行することが私たち20代の生きがいと夢の実現への近道であるといえます。

ライフイベントとマネープラン

 私たちの人生を4つの期間にわけると、独身期、家族形成期、家族完成期、家族充実期に区分できます。独身期には結婚資金や自動車購入費、家族形成期には子供の出産費用やマイホーム購入資金、家族完成期にはマイホーム購入資金や子供の教育費用、家族充実期には老後資金や子供の結婚そしてリフォーム資金などが支出として考えられます。それぞれのイベントごとに預貯金や保険・共済、そしてローン・クレジットで備えておく必要があります。
 マネープランを考える上ではライフイベントにあわせた準備・計画をすることが重要です。最初に結婚・車の購入・住宅取得などのイベント種類を考え出し、次にそれらのイベントが発生する時期はいつなのか、そしてそれぞれのイベントにどれくらいの資金が必要なのかを検討していくことが、失敗しないマネープランのコツといえます。

金融商品の選択基準

 それぞれのライフイベントに合わせた金融商品の選択も十分考慮していく必要があります。「タマゴを1つのカゴに盛るな」という言葉にあるように、バランスのよい金融商品の組み合わせが必要といえます。イベントごとに「運用の目的」、「必要時期」、「必要金額」を検討して、商品選択の3大特性である「安全性」、「流動性」、「収益性」を考慮していくことが大切です。
 まず、「安全性」については、金融商品へ充当したお金が目減りしたり期待していた利益が得られなくなったりする危険がないか?ということでその中に3つのポイントがあります。1つめとして、金融商品を持っていることで生じる利益・利息・配当などが金融経済情勢などにより変わるのか? 2つめとして、金融商品自体の価格や価値が変動するのか? 金融商品のなかには、市場などで価格・相場が決まるものもあります。この2つの特徴がある商品としては、例えば株式や外貨預金が考えられます。3つめとして、取り扱い金融機関の経営状況はどうか?ということで、金融商品を取り扱っている金融機関、発行している会社の経営悪化や破綻によって、金融商品の価値が失われる可能性があるからです。
 「流動性」については、どのくらいお金が固定されずにすむか? すなわち必要な時にどのくらい自由に現金に換えられるか? 「流動性」にも5つのポイントがありまして、1つめとして、満期や据置機関があるか? あるとすればどのくらいの期間が必要なのか? 2つめとして、中途解約ができるのか? できるとすればどういう条件で可能なのか? 場合によっては、解約手数料・元本割れということも考えられます。この2つの特徴ある商品としては、例えばMMF(マネー・マネージメント・ファンド)という金融商品があり、これは実績配分の商品であるため、元本は保証されておらず、いつでも解約できますが30日以内の解約の場合、1万円につき10円の信託留保額が徴収されます。またヒットという信託銀行の金融商品は、1ヶ月の据置機関が置かれており、1ヶ月を経過すれば自由に解約できますが、やむを得ず1ヶ月以内に解約する場合は解約手数料が必要となります。3つめとして、換金はスムーズなのか? 店頭ですぐ換金が可能なのか? 事前に申し入れの手続きが必要なのか? ATM・CDでの引き出しが可能なのか? 例えば長期国債ファンドという商品は、解約・買取のいずれの場合も、代金は原則として約定日より4営業日から受け取れるような制度になっています。4つめとして、売りたいのに買い手が見つからないということはないのか?といった株式・債権などの有価証券の売却のケースで考えられます。5つめとして、取扱金融機関へのアクセスはしやすいか? 店舗やATM・CDの多さ、近さを考慮する必要があります。
 「収益性」については、その商品で運用することによって期待される利益が多いか? それとも少ないか?という点に着目することが重要です。
 一般的に、安全性が高ければ収益性は低く、収益性が高ければ安全性は低いですし、流動性が高ければ収益性は低く、収益性が高ければ流動性は低くなります。それらの特徴ある商品を上手に組み合わせて、最終的には「ノーリスクハイリターン」にできるだけ近づけることが選択の理想といえます。


マネープランの実行

 実際のマネープランの実行については、まず最初に目標を決めて、そして過去・現在・未来の家計の見なおし、つづいて慎重に積立額を決定して、最終的に金融商品・金融機関を選んでいきます。ここでは4つのアドバイスがあります。
 まず1つめとして、一定期間ごとに積立額や金融商品の見なおしをしてください。日々刻々変化する雇用・年金・経済環境に対応することが必要であるからです。
 2つめとして、複数のライフイベントに備えた準備と検討をしてください。決して目先のイベントだけにとらわれてはいけません。
 3つめとして、積立方法は給料天引き・自動積立を利用してください。貯蓄をしようと考えても、いったん給料が手元に入ってしまうと、どうしても使ってしまって、なかなか貯蓄できないものです。最初からないものと考えて貯蓄できる給料天引きや、給料口座から引き落としになる自動積立であれば、知らない間に貯蓄することが可能です。「お金を貯めるということは消費の先送り」となりますし、夢の実現にむけての蓄積であると同時に、将来の不安に向けての準備といえますので是非実践してみてください。
 4つめとして、ライフイベントの実行の際にどうしても目標金額に足りずに、ローンやクレジットを利用することになることも考えられます。「お金を借りるということは、将来見込める収入の先取り」ということを忘れずに、決して無理をしないようにしてください。

モデル賃金によるライフプランモデル

住宅購入時のチェックポイント

 これまで見てきたとおり、私たちの人生には様々なライフイベントが考えられます。そのなかでもマネープランという観点からみますと、最も重要なのが住宅購入するときといえます。ここでは5つのポイントがあります。
 1つめとして、自己資金は購入費用の少なくとも30%以上を用意してください。平均的建築費用2,654万円に対して、だいたい800万円ぐらいが目安です。
 2つめとして、購入費用の他にかかる付帯費用は、購入額の5%から10%が必要です。平均的建築費用2,654万円に対して、だいたい130から260万円が目安です。
 3つめとして、現在だけではなく、将来のライフイベントも考慮した返済計画を立てるようにしてください。例えば返済計画を立てる時に、返済期間を最大期間まで長くし、毎月の返済額をできるだけ減らして、家計を圧迫しないようにします。そして、家計に比較的余裕のあるときに臨時返済をしていくなどの方法も考えられます。
 4つめとして、返済(負債比率)は年収の30%をメドにしてください。例えば年収400万円の人ですと、30%の120万円を他の借入と合計しての年間返済金合計の目安としてください。
 5つめとして、返済のボーナス分の割合は低めにするように心がけてください。現在の不況化では賃金部分でまず減少していくのはボーナスです。ボーナスをアテにした返済計画を立ててしまうと、家計を圧迫して後で痛い目にあうことがあります。増えつづけている自己破産の原因にもなってきています。
 住宅に限らず、お金を借入するときのポイントは「いくら借りられるのか」ではなく「いくら返せるか」であることを忘れてはなりません。

今や自己責任の時代

 ローンやクレジットを利用する際には、しっかりとした見極めが必要です。便利・手軽だからといって「金利」をあまり深く考えずに借入をしていることはないでしょうか? 金利が高いほど、金額が高いほど、当然支払う利息は増加します。新規顧客に限り「1週間無利息」「30日間無利息」サービス実施中という消費者金融がありますが、新規顧客取り込みの「甘いワナ」です。その期間をすぎると通常金利で、ワナから抜け出すことは容易ではありません。
 2002年度の自己破産件数は過去最高の21万件を突破し、破産予備軍は200万人を超えるともいわれます。自己破産の原因の1つに消費者金融の利用があげられます。消費者金融の金利はいわゆる「グレーゾーン」の金利であり問題となっています。金利を規制する法律は利息制限法であり、この法律で規定された金利を超えるものは、本来無効ですが、罰則規定の定めはありません。罰則規定を定めているのは出資法であり、年29.2%を超える金利を取れば処罰されます。出資法と利息制限法の間、つまり利息制限法の金利超29.2%以下の金利がまさに「グレーゾーン」です。今や自己責任の時代、私たちの賢明な選択が求められています。

 労働金庫では、このような活動を通じて、組合員とその家族を守る消費者教育を進めています。今後も、労働組合と労働金庫が協力して情報の氾濫から組合員やその家族を守らなければなりません。労働金庫は、唯一の福祉金融機関の使命として的確で正確な情報を提供していきます。