(1)従来技術の問題点と新しいメタン発酵技術の提案
先ほども説明しましたが、従来のメタン発酵技術の問題点は、メタン発酵および後処理(活性汚泥処理)から発生する固形残渣の処理にあります。現在、固形残渣の堆肥化等への検討が進められていますが、農地への施肥の許容量から安定した供給先を確保することは非常に困難であり、固形残渣の処理がメタン発酵技術の普及を図る上でのカギになると考えられています。このような背景のもと、当社は好熱菌による固形残渣の可溶化技術(好熱菌の分泌酵素による固形残渣の可溶化技術)を利用したメタン発酵プロセスを新たに開発しまして、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の平成12年度地球環境保全技術開発費補助事業助成金を受けて実証実験を行いました。その成果の一部を紹介します。
(2)実証実験の目標
食品廃棄物のメタン発酵および後処理として行う活性汚泥処理から発生する固形残渣(未分解の食品廃棄物および余剰汚泥)を完全に消滅し、かつ、従来法に比べてメタン発酵でのメタンガス発生量を1.3倍(ガス化率90%)に増大することを目標としました。
(3)処理フローおよび実験方法
本システムは、前処理(破袋、分別、破砕)工程、メタン発酵処理工程、後処理(活性汚泥処理)工程および可溶化処理工程の4つの工程から構成されています。実証実験では、処理対象として食品工場から発生する食品廃棄物(動植物性残渣)を使用しました。食品廃棄物は1日当たり約85kgを実験装置に供しました。以下に各処理工程の内容を説明します。
a)前処理(破袋、分別、破砕)
食品廃棄物は、発酵不適物(容器、袋)を分別するため、破袋・分別機に直接投入しました。投入した廃棄物は回転ブレードにより破砕され、下部スクリーンより排出されます。一方、発酵不適物は、回転ブレードにより発生する風力により選別、除去されます。破袋・分別されて回収された食品廃棄物は破砕機へ投入され、投入TS(蒸発残留物)濃度を約10%に調整後、破砕されます。
b)メタン発酵処理
発酵槽は、55℃(高温式)に保ち、機械式攪拌機により発酵液を攪拌する方式を採用しました。破砕した食品廃棄物を原料として投入し、1回当たりの原料投入量を反応液量(2.5m3)の1%(25L)としました。また、原料の投入回数を増やして滞留時間を短くすることにより、有機物負荷を上昇させました。
c)後処理(活性汚泥処理)
メタン発酵処理液を固液分離し、その上澄み液を活性汚泥により処理しました。
d)可溶化処理および可溶化液のメタン発酵槽への返送処理
本システムの特徴である可溶化槽は、65℃に保ち、装置下部よりブロワにて空気を供給するとともに機械式攪拌機により固形残渣を攪拌する方式を採用しました。メタン発酵処理から発生する未分解の食品廃棄物と活性汚泥処理から発生する余剰汚泥を投入し、好熱菌の分泌酵素により固形残渣の可溶化処理を行いました。そして、固形残渣の可溶化処理で得られた可溶化液をメタン発酵槽へ返送しました。
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(4)成果
可溶化液のメタン発酵槽への返送のない従来型のメタン発酵処理では、固形残渣の発生率が約25%、ガス化率が約70%になりました。本システムにおいては、好熱菌による固形残渣の可溶化率は30〜40%で、事前に実施した室内実験とほぼ同等の結果が得られました。可溶化液をメタン発酵槽へ返送した結果、ガス化率は約90%に向上しました。従いまして、本メタン発酵システムは、従来技術では発生していた25%の固形残渣を完全消滅できるとともに、ガス化率を従来技術の約1.3倍に向上できる画期的なシステムであることを実証しました。
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