夢と志で拓く
全員参画経営







株式会社マンダム 常務取締役
桃 田 雅 好


はじめに

 みなさん、はじめまして桃田と申します。本日は第3回ビジョンづくり委員会にお招きいただき有り難うございます。せっかくのお休みにもかかわらず、こんなにたくさんの方が参加され、「ビジョンづくり委員会」という場を通して、労働組合やみなさん自身の「ビジョン」について勉強されていると聞き、大変感心しています。
 今日、こうしてみなさんを前に講演させていただいているのは、ひょんなことから関谷委員長と出会い、いろいろとお話をする中で、私がこれまでマンダムで取り組んできた社員教育や人財育成とパンテツクユニオンが取り組まれているやる気を出させたり、モチベーションを高めたりしている活動が同じということに共感したからです。
 先ほど、プロフィールを紹介いただきましたが、私はマンダムに入社して約30年になりますが、営業、販売促進、製品開発、マーケティングなどに携わってきました。また大学での専攻がマーケティングであり、現在は社外でも日本マーケティング協会の理事をしている関係から企業の方を対象にセミナーを開催したり、日本能率協会主催の講演会などで話をする機会が多くありました。
 本日は、マンダムというひとつ企業のマーケティング革新とその変遷、企業としてビジョン、戦略の必要性、最後にミッション、ビジョン、戦略についてまとめてみたいと思います。私の講演がビジョンづくり委員会のメンバーの皆さんに少しでもお役に立てればと思っています。

(株)マンダムについて

 まずはじめに、マンダムという企業について少し紹介したいと思います。まず、社名ですが、1927年(昭和2年)12月の設立以来、頭髪化粧品を中心とした事業を展開し、幾多の変遷を経て現在の株式会社マンダムとなりました。MandomはHuman & Freedomの合成語で「人間尊重と自由闊達な風土の中で豊かな創造性が発揮される人間集団」を意味します。次にシンボルマークですが、階段状の3つのブロックにはPerfect Balance(均衡)、Fine Sense(洗練)、Original Personality(個性)の3要素を示しています。また、3つのマークが45度に並んでいますが、これは45度の角度で社会に限りなく貢献していきながら成長したいとの意味を込めて表現したものです。

 続いて、マンダムの歴史について簡単に説明します。1927年に金鶴香水株式会社としてスタートしましたが、当時は女性用香水の輸入販売を行っていました。その後、製造も行うようになり、1933年(昭和8年)に「丹頂チック」を発売し、時代を風靡する大ヒットとなり、企業基盤を確固たるものにしました。1959年(昭和34年)、社名を丹頂株式会社に変更し、1971年(昭和46年)に現在の株式会社マンダムに変更しました。
 経営状態については、これまで順風満帆に進んできたと思われるかも知れませんが、実はこれまでに2度の大きな経営危機がありました。1度目は1967年ごろで、男性化粧品時代が到来したときに新製品がなく対応が立ち遅れました。「う〜、マンダム」のコマーシャルを覚えていらっしゃる方も多いかと思いますが、その時は映画俳優のチャールズ・ブロンソンをイメージキャラクターに起用した「マンダムシリーズ」が大ヒットし、1度目の危機を乗り越えることが出来ました。2度目は1978〜1980年に販売体制を代理店経由販売から直接取引販売に転換した時です。極度の経費増大により挫折し、結局、代理店経由販売に戻すとともに、経営再建のために苦渋の選択である人員削減により2度目の危機を乗り越えました。経営者の判断一つで会社の行く末が大きく左右されるということをこの時に痛感しました。
 2度の経営危機をバネにしたからこそ今のマンダムがあると言っても過言ではありません。また、昔の製品にしがみつくことなく、次々に新しい商品を発売し確固たるブランドを持てたことが成長につながったといえます。大きな危機の中でマンダムが得たものは、「消費財メーカーとして確固たるブランドを持つこと」と「全員参画による経営とマーケティング」の重要性でした。この2点については後ほど詳しくお話ししていきます。



マンダムにおける企業理念

 次に、企業理念についてお話ししたいと思います。「理念」と「ビジョン」は違うものです。どんな会社でも企業理念というものがあると思いますが、マンダムグループの企業理念は「美と健康を通じ、快適な生活にお役立ちする」ということです。つまり、美と健康に関することであればすべてのことに取り組むということで、国内に限らず全世界に展開していくことを意味しています。ただ、これだけでは少し理解しにくいので、「健・清・美・楽」というビジネスキーワードで理念を表現しています。健康で、清潔で、美しくなる商品を提供することを目的としています。ここまでの表現では化粧品を扱う他社も使われていますので、マンダムでは、当たり前すぎて面白くないということで、何事にも「楽しく」という意味を込めて「楽」を加えています。つまり、楽しく健康に、楽しく清潔に美しくなるという意味を込めて「健・清・美・楽」というビジネスキーワードを用いています。もちろん、仕事をするには楽しく、同じ製品にするなら楽しいものを追求しようという意味も込められています。例えばフェイシャルペーパーはこの発想の元に商品化したもので、洗顔クリームにはない楽しさがあると思います。


経営の基本思想

 企業理念の具現化に向けて3つの基本思想を掲げています。『全員参画の経営』、『生活者発→生活者着』、『「生活者理解力」、「得意先理解力」、「商品理解力」の3理解力の向上』です。それぞれについて詳しく説明していきます。

 まず、『全員参画の経営』という思想です。
 全員参画の経営を掲げるには、そうせざるを得なかった背景がありました。マンダムの歴史のところでお話ししましたが、1978年ごろにワンマン経営により経営危機に陥りました。その時の苦い経験をもとに「全員参画」による経営ということを強く認識するようになりました。新入社員から経営トップまで一人ひとりが知恵を出し合い、協力することを考働の基軸としています。ちなみに、マンダムでは「行動」のことを、考えて働くという意味から「考働」と表現しています。
 一部の経営者に任せきりにせず、経営のトップが変わろうとも企業としての理念を従業員みんなで全うしようという考えが、「全員参画の経営」という企業理念となっています。
 具体的にどのように取り組んでいるかといえば、企業では「情報」というものが大変重要であり、パンテツクユニオンの機関紙もTwo-Wayと名付けているそうですが、マンダムでは双方向(Two-Way)の情報交換を行うために「情報カードシステム」というものを導入しています。全員参画といくら口で言ってもこれを具体的な考働に移すことは難しいわけで、マンダムではこれは各社員が業務改善や新製品のアイデアなどを情報カードに書いて上司に提出し、課長や部長までだけでなく必ずトップまで回覧されるシステムで、経営企画室が全体を管理し、関連部署へ情報をフィードバックするシステムです。もちろん、斬新なアイデアがあればそれを元に具体的な考働に移していくわけです。年間約5万枚の情報カードが提出されますが、情報の内容は重要度に応じて社内報に掲載され、一般の社員が見られるようになっています。また、表彰制度を設けることで社員のモチベーションも高めています。よく他社も真似をされるのですが、なかなか上手くいってないようです。その原因として問題は課長や部長クラスの管理職のところで、情報が滞留してしまい、真実がトップまで伝わらないことが多いようです。マンダムではこのようなことが行われないように厳重に管理を行っています。

 次に『生活者発→生活者着』という思想です。
 消費財メーカーにとっては、店頭でお客様に購入していただいて初めて評価されます。つまり、お客様から支持を受けるかどうかにかかっています。支持を受けるためには市場にある生活者の「不満」を見つけ出さなければなりません。ここが生活者からの発信点で、その不満を企業に取り入れ、お客様の「ウォンツ」を発見し、それを満たす魅力ある文章に表現されたのが「コンセプト」です。このコンセプトを具現化するために、研究技術、デザイン、ネーミング等が行われ製品となります。一方、コンセプトをもとにそれをわかりやすく伝えるためのコミュニケーション戦略とコンセプト及びターゲットとマッチした流通・販売戦略を考えます。製品には価格を設定し、生産・物流計画のもとに市場へと発売されると商品となり、生活者に購入されて満足を与え、企業にはその代償として利益が入り、マーケティングプロセスは完了します。これがマーケティングプロセスの共有理念であり、生活者発→生活者着という考え方です。世界で1人でも多くの生活者に継続して価値を提供できる経営を目指しています。
 ここで重要なことは「製品」と「商品」は違うということです。製品に価格を設定し、生産・物流計画のもとに市場へ発売されると商品になります。生活者に購入されて満足を与え、企業にはその代償として利益が入るわけです。企業の存続には利益が必要で、生活者の満足を得るとともに利益を出さなければその商品は市場から撤退せざるを得なくなります。
 例えば、不良品が出た場合に、この「生活者」という考え方がなく、企業の論理で物事を進めてしまうと大きな失態を招くことになりますので、マンダムでは必ず「お客様」の視点で物事を見て、考働しています。

 最後に「生活者理解力」、「得意先理解力」、「商品理解力」の3つの理解力の向上です。
 この3つの理解力は、先程述べた「生活者発→生活者着」という思想に基づく生活者の理解力があり、これがマンダムの理念の源泉であるといえます。「得意先理解力」については、資材関係の得意先があり、営業部門においては販売店があり、商品開発部門、製造部門においてもそれぞれ協力会社があり、パートナーとして、お互いが成長することが大切という考え方です。それから「商品理解力」については、自社商品はもちろんのこと、他社の商品についても十分に理解しておかなければメーカーとして大変恥ずかしいことになります。変化する生活者、得意先、商品(サービス)の動向はもちろん、情報や知識にアンテナを張り巡らし、おのおのの理解力を高めることを目指しています。当たり前のことのようですが、1つでも欠けると市場から取り残されていくことになるからです。


マーケティング戦略

(1)マーケティング革新フロー
 マンダムにおけるマーケティングについて説明したいと思います。歴史のところでお話ししました2度目の経営危機の後、1982年に第1次MP(Middle range Plan)5ヵ年計画を立てて新体制に移管しました。このときの経営政策の最重要課題は、新経営陣と社員の全員参画による経営とマーケティングの再構築でした。その根幹をなすものは、社会へのお役立ちの視点に立つことと社員が夢と誇りを持って事業展開をおこなっていくことでした。当時、50億円程度の売上の中で、事業再建の目標数値は100億円の国内売上げの達成でした。このままの数値目標を掲げると、人員が減少する中でとんでもない結果が想定できたため、当時の商品単価と生活者の化粧品使用率から換算して100億円=200万人のマンダムファンづくりを再建スローガン(ビジョン)にしました。ビジョンを売上高ではなく「200万人マンダムワールドの創造」としたことで、全社員が一丸となって家族や自分を取り巻く全ての人達にマンダムワールドを広げていこうとする積極的な姿勢が生まれました。そして、このビジョンのもとにミッション(使命)、戦略、4P政策が明記された新しいマーケティングフローを創り出しました。特に4P政策は現在の戦術となっているもので、これが、マンダムの成長のシナリオです。

(2)マーケティング戦略構築の基本認識
 経営におけるマーケティングの位置づけと役割について説明したいと思います。経営とは企業価値拡大の仕組みづくりであり、損益計算書や貸借対照表で評価されます。一方、マーケティングは商品が売れる仕組みづくりで市場(マーケット)から評価を受けるものです。マーケティングは売上と利益達成の最適手段として経営の中核に位置付けられるもので、顧客、会社そして社員の3者満足が達成されて初めて成功したといえます。
 具体的にいうと、理念のもとにビジョンがあり、そのもとに戦略、戦術が位置づけられます。この戦略と戦術を考えることがマーケティングです。「理念なくしてビジョンは出来ず、ビジョンなくして企業の戦略はたてられず。」これがマンダムの考え方です。
 戦略と戦術についてはこの後詳しく説明しますが、マーケティングの目的は売上と利益を達成することにあり、手段としては新市場を創出できる技術を開発するか他社商品に勝つ技術を開発するかの2点に絞られます。経営の基本思想でもお話ししましたが、マーケティングの際に重要なことは生活者への「お役立ち」が達成できているかを考えることです。顧客満足はサービスの広さと深さを追求することで達成できるものと確信しています。先ほど3者満足ということを言いましたが、忘れられやすいのは社員満足です。顧客と会社が満足して社員だけが満足しないというのはよくあるケースで、社員満足が達成できるかどうかは企業理念とビジョンを共有できているかどうかで決まります。このことは企業だけでなくパンテツクユニオンでも同様だと思いますので、しっかりした理念とビジョンを掲げて活動に励んでください。

(3)マーケティングの戦略と戦術
 戦略と戦術について詳しく説明します。戦略と戦術はセットで考えられますが、戦略を簡単に説明すると、方針、系数目標、シナリオの3点を明記した中長期活動といえます。具体的な活動としてはS(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)の3つがあり、市場をうまく細分化し(S)、マーケティング資源を投下すべき市場を選択して(T)、カテゴリーとブランドの市場ポジションを明確にする(P)ことが大切です。戦略(シナリオ)は将来的にこうなりたいという意思を表したもので、基本的には変えるべきものではなく、役員クラスにより決定するものです。
 一方、戦術は戦略のS,T,Pで選択した市場において、施策、予算、スケジュールの3点を明記した短期活動といえます。具体的な行動としては、4つのP(Product:商品、Price:価格、Promotion:プロモーション、Place:チャンネル)を施策に盛り込む(4P政策)ことで持続的競争優位を確立していきます。戦術は課長〜部長クラスにより決定するもので、戦略とは異なり市場変化に追随して短期的にどんどん変えていくものです。

(4)マーケティング戦略のフレームワーク
 マーケティング戦略は経営戦略と密接に連動するもので、そのフレームワークについて説明します。経営者が必ず行わなければならないことは、事業が理念から逸脱していないかどうかを判断することです。例えば、新商品を発売するときに経営理念に合致しているか、お客様を欺くことはないか、長期戦略に基づいているかなどです。このように、理念からビジョンが生まれ、ビジョンに基づく戦略が策定されます。戦略により具体的な計画がたてられ、それを達成するために管理が行われます。状況の変化により計画が変更されることもありますが、理念については変えるべきではなく不変とすべきで、ビジョンで5〜10年、戦略で3〜5年、計画で1年を目安に具体的な行動計画を立てていきます。具体的な戦略の立案とは、経営戦略に基づいて人、組織、資金の対応や物流・生産技術システムを考慮して決定していくことになります。



Only One企業を目指して

(1)人間尊重の企業文化
 マンダムは2003年3月で創業75周年を迎えます。この間、マンダムは「生き続けることが基本」、「社会に対して正直であること」、「身の丈経営」という経営哲学を引き継いできました。この考え方は今でも変わりません。また、一貫して人間尊重の経営を実践してきました。人財はバランスシートに表れませんが、企業にとって最も大きな財産であると考えています。理想は、マンダムグループの特徴である、若さ・情熱・やる気をベースに、楽しく「知的なにぎわい」が社内に醸成されることです。経営者から新入社員に至るまでこうした「場」を創り、全員参画経営を実践できる「人を活かす」企業となることを永遠の課題にしています。こうなることが将来的に「Only One企業」につながっていくと考えています。


(2)マンダム再建へのシナリオ、キーワード
 2度目の経営危機から再建を目指す中で作成された将来にわたるマンダム躍進のシナリオを紹介します。まず、「我々の子供達に入社をススめられる会社にしたい」という再建の思いを掲げました。自分の子供に胸を張って勧められる企業にしようというものでした。次に100億円の売上達成と持続を目的とした『200万人のマンダムワールドづくり」を再建のスローガンとしました。さらに再建のキーワードとして会社が傾いている中で「生活者発→生活者着」と「売り場から買い場の創造」という考え方です。考えて働くという「考働」において開発部門ではお客様視点における商品開発を、営業部門では販売店、店頭で新たな創造を見いだすことをキーワードに取り組みました。
 そして再建後のイメージとして「No.1よりOnly One企業」になることを掲げました。「お役立ちの考働の実践」をもとに「Only One企業」になるための具体的目標として「モノづくりから価値(勝)づくり」という合言葉を使いました。単にモノを作って売る時代から如何に価値を見出せる商品を作れるかという時代に突入する中でカチ(価値)づくりができる企業がカチ(勝ち)を収めることができるのです。商品別でみると「GATSBY」というブランドが男性化粧品でシェアNo.1を達成していますので、個別商品としての1つの目標は達成することができています。また、次の目標は『人件費は低く、賃金は高くの会社へ」ということで、そのための具体的な数字目標として「年収1000万円」を掲げています。マンダムでは売上高に対し人件費は約12%ですので、売上高が500億円あれば人件費は60億円となり、社員数が600人であれば1人あたり1000万円になります。決して無理な数字とは思っていませんし、数字目標を掲げることで、社員のモチベーションは高まります。今後はOnly One企業を目指していきたいと思っています。これらの目標達成のためにはこれまでお話ししてきましたように、「全員参画経営」が必要で、企業理念とビジョンに基づいた社員の積極的な考働が基軸にあることはいうまでもありません。

(3)ビジネスDNAフレームワーク

 これまでの話のまとめとして、ビジネスフレームワークというものを紹介したいと思います。企業というものは人の集まりであると考えると有機体とみることができます。「ビジネスDNA」という言葉が最近よく使われていますが、人間に遺伝子があるように企業にも遺伝子、つまりDNAが存在するという考え方です。分かりやすくいうとDNAは社風とか体質と言い換えることができます。神鋼パンテツクさんにも独自のDNAがあるはずです。そういう観点からまとめたマンダムのDNAフレームワークがこの図です。
 私は、30年間の会社人生の中で、企業は潰してはいけないということと、お客様と接点をもつ営業や流通の仕組みとお客様の満足を得る商品を提供することの大切さを学びました。
 マンダムにおいては、3つの経営哲学と考働の基軸である3つの基本思想のもとに「美と健康を通じ、快適な生活にお役立ちする」という経営理念があります。その理念に基づくビジョンが「人を生かす企業でありたい。人間主義の会社であり続けたい」というものです。その結果、「グローバルなOnly One企業」が生まれると考えています。
 もう一つ大事なことは「考働の基軸」の上に「考働の場」をつくることです。これが「知的なにぎわいの場」です。商品開発や工場でも研究開発においても活性した職場づくりのために部門長自らが「知的なにぎわいの場」づくりを行っています。もちろん、企業ですから仲良しクラブではいけません。
 このようにフレームは大きく「考働の基軸」、「考働の場」そして「考働の美学」の3つから構成されています。考働の基軸とは企業哲学や基本思想に基づくものであり、考働の場とは企業理念を全うするための知的なにぎわいの場であり、考働の美学とはしなやかに、したたかに勝ち続けることを意味しています。この3つのフレームに企業理念と人間尊重の企業文化が融合されて、「グローバルOnly One企業」が生まれると考えています。

「5.7.5」そして「7.7.5.1」の
ワーキングライフ

 約30年の会社生活での経験からこのようなワーキングライフを作ってみました。若い皆さんの参考になればと思っています。私は大学を卒業して入社した新入社員に対し、「5.7.5の17年間はとにかくがんばって働いてくれ、いかに40歳をむかえるかが大切なんだ。」と常々言っています。まず、大卒で入社したとして最初の5年間、28歳ごろまでは「適職の発見」です。初めて社会に入った後のトレーニング期間になるわけですが、自分に合う仕事は何かを真剣に考える期間です。もし、仕事があわなければ転職もまだ可能です。
 次の7年間の35歳ぐらいまでは、その適職の仕事を習得するために一生懸命働いてください。この頃は、結婚して子供が生まれて、公私ともに大変な時期だと思いますが、思いっきりスキルを高めてください。次の5年間は、任された仕事に対し成果を出していくことになります。この頃は自分と組織のために働くということです。組織が嫌であれば辞めればいいわけで、ただし、仕事に対してはロイヤリティーをもって取り組んでいただきたいと思っています。
 40歳ごろになると、更に公私ともに忙しくなりますが、その後は会社をどうするかといった上位的な考え方の戦略の実践、構想を行い、54歳ごろからは後継者の育成を行います。59歳からの一年間で身辺整理を行い、60歳で退職し、その後80歳までの人生を週3日の実践として社会貢献をかねた仕事や奉仕活動をした後、家族に迷惑をかけないよう運動をして晩年を迎えたいと考えています。


「おわりに

 本日はマンダムという企業の経営戦略を中心にお話をしてきました。繰り返しになりますが、マンダムの経営戦略は、まず理念(使命)があり、それに基づいてビジョンが創られ、それを達成するための戦略が立てられます。ミッションと理念は非常に近いもので、外資系の企業では理念のことをミッションと呼んでいます。社会の中でどういう存在か、何をしなければならないか、どういう約束をしたのかということを明確にすることが大切です。
 このミッションを明確にすることでビジョン(構想)が生まれます。10年後どうあるべきかというビジョンに対する戦略・戦術を立てるという手順は決して企業だけに適用されるものではなく、パンテツクユニオンであっても個人であっても同じであるといえます。
 また、私が思うユニオンの役割は、会社の人事・総務で出来ないことを担うこと、企業の管理職・役員の出来ないことを担うことではないかと思います。それぞれの界面活性剤になることもひとつの役割だと思います。会社と個人とユニオンのビジョンが三位一体になることが必要であり、このような観点からもユニオンのビジョンづくりに生かせていただければと思います。
 ここに参加されている皆さんも、是非、今おかれている状況でミッションを明確にし、理念、ビジョンをつくって、それを達成していくための戦略を立ててください。そしてそれに向かって努力をしてください。人生がもっと楽しくなると思います。最後に私のいちばん好きな言葉を皆さんに紹介して終わりにしたいと思います。
 「楽しくなければ仕事ではない。
  きびしくなければ遊びではない。」
 会社とか他人任せに生きていくことほどつまらない人生はないと思います。楽しく仕事をして、精一杯遊ぶ。私たちには、仕事を楽しくする権利があり、そのために仕事を通じてすばらしい人生を送ろうではありませんか。本日はご清聴ありがとうございました。

(文責:桂  健治)


受講者から寄せられた感想文に対する
桃田さんからのメッセージです

 皆さんの感想を読んでいて、改めてマンダムの事、
自身の軌跡を考えさせられました。
 人間中心の会社、仕事、生き方、やはり間違いは無い、
という実感と喜びを持ちました。
 マンダムの全員が理念を共有しているか、と言うとこれは違います。 
 理念は大事だ、共有しなければ、のレベルで個人差も又あります。これを絶えず言い続け、導くのが幹部職の役割で、理念や哲学が有るゆえに、ベクトルが合い、前向きな方向に向かえます。
 そして被害者意識や批判家が生まれにくく、「ウチはウチらしくやろう!」という風土が生まれてきます。
 自分と家族と友人を愛せれば仕事も会社も愛せます。自分と会社に誇りを持ちましょう、今が駄目なら5年後、10年後に。
 感想集から、こんな想いをしました。参加者の皆さんに“ありがとう!”と宜しくお伝えください。
株式会社マンダム   
桃 田 雅 好