企業理念の具現化に向けて3つの基本思想を掲げています。『全員参画の経営』、『生活者発→生活者着』、『「生活者理解力」、「得意先理解力」、「商品理解力」の3理解力の向上』です。それぞれについて詳しく説明していきます。
まず、『全員参画の経営』という思想です。
全員参画の経営を掲げるには、そうせざるを得なかった背景がありました。マンダムの歴史のところでお話ししましたが、1978年ごろにワンマン経営により経営危機に陥りました。その時の苦い経験をもとに「全員参画」による経営ということを強く認識するようになりました。新入社員から経営トップまで一人ひとりが知恵を出し合い、協力することを考働の基軸としています。ちなみに、マンダムでは「行動」のことを、考えて働くという意味から「考働」と表現しています。
一部の経営者に任せきりにせず、経営のトップが変わろうとも企業としての理念を従業員みんなで全うしようという考えが、「全員参画の経営」という企業理念となっています。
具体的にどのように取り組んでいるかといえば、企業では「情報」というものが大変重要であり、パンテツクユニオンの機関紙もTwo-Wayと名付けているそうですが、マンダムでは双方向(Two-Way)の情報交換を行うために「情報カードシステム」というものを導入しています。全員参画といくら口で言ってもこれを具体的な考働に移すことは難しいわけで、マンダムではこれは各社員が業務改善や新製品のアイデアなどを情報カードに書いて上司に提出し、課長や部長までだけでなく必ずトップまで回覧されるシステムで、経営企画室が全体を管理し、関連部署へ情報をフィードバックするシステムです。もちろん、斬新なアイデアがあればそれを元に具体的な考働に移していくわけです。年間約5万枚の情報カードが提出されますが、情報の内容は重要度に応じて社内報に掲載され、一般の社員が見られるようになっています。また、表彰制度を設けることで社員のモチベーションも高めています。よく他社も真似をされるのですが、なかなか上手くいってないようです。その原因として問題は課長や部長クラスの管理職のところで、情報が滞留してしまい、真実がトップまで伝わらないことが多いようです。マンダムではこのようなことが行われないように厳重に管理を行っています。
次に『生活者発→生活者着』という思想です。
消費財メーカーにとっては、店頭でお客様に購入していただいて初めて評価されます。つまり、お客様から支持を受けるかどうかにかかっています。支持を受けるためには市場にある生活者の「不満」を見つけ出さなければなりません。ここが生活者からの発信点で、その不満を企業に取り入れ、お客様の「ウォンツ」を発見し、それを満たす魅力ある文章に表現されたのが「コンセプト」です。このコンセプトを具現化するために、研究技術、デザイン、ネーミング等が行われ製品となります。一方、コンセプトをもとにそれをわかりやすく伝えるためのコミュニケーション戦略とコンセプト及びターゲットとマッチした流通・販売戦略を考えます。製品には価格を設定し、生産・物流計画のもとに市場へと発売されると商品となり、生活者に購入されて満足を与え、企業にはその代償として利益が入り、マーケティングプロセスは完了します。これがマーケティングプロセスの共有理念であり、生活者発→生活者着という考え方です。世界で1人でも多くの生活者に継続して価値を提供できる経営を目指しています。
ここで重要なことは「製品」と「商品」は違うということです。製品に価格を設定し、生産・物流計画のもとに市場へ発売されると商品になります。生活者に購入されて満足を与え、企業にはその代償として利益が入るわけです。企業の存続には利益が必要で、生活者の満足を得るとともに利益を出さなければその商品は市場から撤退せざるを得なくなります。
例えば、不良品が出た場合に、この「生活者」という考え方がなく、企業の論理で物事を進めてしまうと大きな失態を招くことになりますので、マンダムでは必ず「お客様」の視点で物事を見て、考働しています。
最後に「生活者理解力」、「得意先理解力」、「商品理解力」の3つの理解力の向上です。
この3つの理解力は、先程述べた「生活者発→生活者着」という思想に基づく生活者の理解力があり、これがマンダムの理念の源泉であるといえます。「得意先理解力」については、資材関係の得意先があり、営業部門においては販売店があり、商品開発部門、製造部門においてもそれぞれ協力会社があり、パートナーとして、お互いが成長することが大切という考え方です。それから「商品理解力」については、自社商品はもちろんのこと、他社の商品についても十分に理解しておかなければメーカーとして大変恥ずかしいことになります。変化する生活者、得意先、商品(サービス)の動向はもちろん、情報や知識にアンテナを張り巡らし、おのおのの理解力を高めることを目指しています。当たり前のことのようですが、1つでも欠けると市場から取り残されていくことになるからです。
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