「共有」「反映」「定着」の実践が
新しいステージへ
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仲間がひろがる環境展実行委員会 代表   
NPO法人モンゴルエコフォーラム 運営委員  
関 谷 久 之


 みなさん長い間お疲れ様でした。最後に本日のフォーラムを振り返り、まとめという意味で少し話をさせていただきます。今日は、兵庫県勤労福祉協会の久保相談役のご挨拶から始まり、NPO法人や労働組合の事例報告も含め、合計7名のスピーカーの方々に、貴重な話をしていただきました。
 久保相談役からは、兵庫県の取り組みとも関連付けて、「つながり」というキーワードが大切だとご挨拶をいただきました。小林理事長の基調講演では、NPO法人が成果を出して活躍するために「団結」が大切であることを、異体同心という言葉を使って説明していただきました。メインの講演をしていただいた河本先生からは、地域多様性という考え方を、「生存」と「幸福」という切り口で紹介していただきました。ごみじゃぱんの小島事務局長は、Win-Winの関係が大切であり、Localな活動を基本に展開していくことが重要であると示されました。野生生物を調査研究する会の今西理事からは、活動を継続的に続けていくことの重要性と、そのための仕掛けというかヒントを教えていただきました。
 神鋼環境ソリューション労働組合と三菱重工労組神船支部からは、労働組合が取り組む社会貢献活動についての事例を報告してもらいました。同じ神戸市内に拠点を置く組織が、たまたまですが、同じ13年前に社会貢献活動に取り組み始め、その活動が継続され、本日、この場でお互いの事例報告を通じて、二つの活動が初めて交わったということは、非常に感慨深いものがあります。
 何か社会貢献活動やろうと考えると、たいていの組織はまず「自分たちで何ができるのか?」という入り口から入ります。そして次に「自分たちはどんなことをしたいのか?」という点を考えます。そして、その2つで活動を進めてしまいがちなのですが、実は、一番大切なのは「どんなことが世の中で求められているのか?」なのです。この、「何が求められているのか?」という観点が抜けていると、何のためにこうした活動に取り組むのかという軸がブレて、結局、去年もやったから同じことを今年も来年もやる…といった、活動の硬直化に陥ってしまうのです。
 ここに参加されている若いみなさん方も、何か始めるときに、この何が求められているのかという視点を忘れずに、さまざまな活動に積極的に参加してもらいたいと思います。そういう意味で、三菱重工労組神船支部の福岡執行委員が報告された震災ボランティアで、写真とアルバムの復旧という活動は、現地に行きたいからと言って誰でも彼でも現地に押し寄せるのではなく、被災地から求められていることを、現地に行かずに自分たちの地場で取り組むという、非常に良い例だと思います。活動そのもののきっかけも、何かやりたいという思いでアンテナを伸ばし、引っかかってきた情報を逃すことなく具体的な活動に形作っていくということは、アンテナの広さやその感度の良さ、そしてタイムリーに活動を立ち上げる機動力には本当に感心しました。
 ここで3つのキーワードを紹介させていただきます。それは、「共有」、「反映」、「定着」です。最初の「共有」ですが、本日のようなセミナーという「場」であったり、そこで学んだ内容を、自分以外の他の人間との共有することが大切であること。久保相談役の仰った「つながり」とも通ずる言葉ですね。次の「反映」は、学んできたことや広がったネットワークを、自分たちの現在の生活に反映させて、何か行動を起こすことが必要であるということ。そして最後に、生活に反映させた行動を「定着」させていくことが重要なのです。これは、今西理事が言われていた「継続」にもつながる言葉です。
 どうか、この「共有」「反映」「定着」というキーワードを覚えて帰ってもらい、自分自身にとっての「社会貢献とは」について考えていただければと思います。
 13年前に、神鋼環境ソリューション労働組合(当時は旧社名の神鋼パンテツク労働組合)が初めて環境セミナーを開催した際のメイン講演の講師は、本日、基調講演をしていただいた小林さんでした。その際に、当時、兵庫県環境局長であった小林さんは「地球環境保護の問題は一人立つ精神で!」ということを、参加者に伝えてくださいました。これは、誰かがやる!?ではなく、誰もやらなくても一人でも立ち上がり行動を起こす。信念をもって立ち上がれば、必ず賛同者が現れ、最初は小さな輪かもしれないけれど、必ず大きな輪に活動が広がり、一つのムーブメントにつながっていくという意味でした。
 先日、テレビの番組で、世界一幸せな国として知られるブータン王国で、その首都ティンプーの市役所に勤務する、神戸市出身の中島さんという33歳の若者ことを紹介していました。ブータンは長らく鎖国状態にあったものが、ほんの10年余りで海外の情報が押し寄せ、人々の生活が大きく変わり、いま大きな社会問題になっているのが、近代化により急増したプラスチックなどのごみ問題なのです。このゴミの問題に、現地の市役所の職員として取り組んでいるのが、中島さんという若者です。もともと旅行で訪れたブータンに魅了され、1ヵ月のホームステイを経験して、「この国に住みたい」という思いが強くなったそうです。その後、ブータンに役立つ知識を身に付けるという目的でカナダで森林学を学ぶ傍ら、何度もボランティアでブータンを訪れ、海外青年協力隊の活動も経験した後に、その仕事ぶりと真面目な人柄を買われ現在の上司に「市役所で働かないか」と声をかけられたことで、現在、ブータンで活躍しているのです。
 実は、私がNPOの活動として取り組んでいるモンゴルでもブータンと全く同様なごみの問題が発生しています。こうした環境問題の解決をテクノロジーの視点だけで迫るのではなく、問題の多様性を自分の目で見て理解して、先程もお話ししましたが「何が求められているのか」からアプローチする中に、本当の解決策が生まれてくるのではと私は考えています。まず「見る」ということが大切だと思います。
 最後に、「Think Globally Act locally」という言葉を紹介して、このフォーラムのまとめを締めたいと思います。これは、「地球規模で考え、地域で行動する」という意味です。自分が意識しようがしまいが、地球環境での問題は自らの生活に大きな影響を及ぼすという現実を冷静に見据え、常にアンテナを高く広く感度よく張り巡らせ、様々なことに無関心でいるのではなく、自らの問題として考えることが重要だということです。そして、具体的に何かに取り組むには、まずは自分たちの力量に見合った範囲や内容で地道な活動を展開し、継続的に取り組むことで少しずつ広げていくという、今西理事の言うところの「無理のない計画」として取り組む事が大切なのだということです。
 どうか、今日のセミナーという場を一つのきっかけに、みなさん方にとっての「Think Globally Act locally」が見つかり、何か行動につながってくれれば嬉しい限りです。

以 上