環境活動事例紹介A 岐阜蝶(ギフチョウ)の舞う里山づくり |
|
NPO法人野生生物を調査研究する会 理事 今 西 将 行 |
みなさんこんにちは。NPO法人野生生物を調査研究する会の今西です。私たちは、その名の通り野生生物の生息地や生態について調査し、研究をしている団体です。フィールドワークを基本にターゲットに定めた地域で生息する野生生物の種類や数を調査し、そのデータを分析して学術的にまとめ活用しています。そうした成果は国内外への情報発信や、国内外での取り組みとの情報交換にも使われています。あわせて、調査結果を冊子にまとめ、小中学校の野外学習の副読本として寄贈したり、講演会などで環境学習活動に役立てています。 |
【里山づくり】 |
【2008年度コベルコ自然環境保全基金の活用】
2007年度に実施した調査結果を元に、2008年度のコベルコ自然環境保全基金に申請を行った結果、助成金をいただけることができ、そのお金を使って、里山整備に必要な道具類を準備してきました。そして、2008年4月に計画地の30%にあたる約0.3hrを対象に、下草刈りをはじめ竹や潅木の伐採、熊笹の伐採などといった整備を行い、ギフチョウの幼虫の食草であるカンアオイや、成虫の吸蜜花であるスミレの生息保全と保護を行いました。そして、翌2009年の3月から4月にかけて、ギフチョウの発生状況について調査を行いました。 ギフチョウというのは非常に美しい翅を持つ蝶なのですが、比較的原始的な蝶に分類されます。そして、春先になると一番早く羽化して飛び始める蝶であり、早く花を咲かせるスミレの蜜を吸って生きる、春を呼ぶ蝶、「春の女神」と言われます。しかしながら、幼虫の時はカンアオイしか食べることができず、成虫になるとスミレの密しか吸えないということで、生態系の変化に弱く、現状では保護が必要な種となっているのです。 私たちは、まず調査を行った上で、保護する対象についてしっかりと検討を行います。そして、やり方や仕組みといった保護のベースを作り、次にその活動を継続して引き継いでくれる協力者にバトンタッチしていきます。当然、里山保全活動に同行し、指導や助言を行っていくのですが、作業の主体はナチュラリストクラブという集まりに委ねています。このナチュラリストクラブという団体は、自然観察や自然環境の保全に興味を持つ女性が中心の、自然が大好きな方々の集まりです。みなさん熱心で、毎月1回、定例的に里山保全活動に取り組まれています。そして、活動の成果をホームページ(www.wildlife.or.jp/naturalist/)にアップするなど、きちんと形に残して情報発信もされています。 具体的に整備を行っている里山は、7軒から成る小さな集落で、高齢化により里山の整備・保全などは、最近、手付かずになっていた状態でした。はじめは、ギフチョウという貴重な蝶の保護のために必要な活動だとはいえ、他人が集落に入り込むことに住民のみなさんが難色を示していたのですが、定期的に人手が入り、整備されていく里山を見ていくうちに、お互いが交流し共に活動をするようになっていました。 里山というのは、生態系の保全という観点だけではなく、人々が生活していくうえで、自然と共生し培ってきた貴重な文化遺産であると思います。この文化を継承し次の世代につないでいくことも必要だと考えています。 |
【継続する里山活動】 |
以 上 |